ハートロッカー

評価 : ★★★☆☆

あらすじ

イラクで爆弾処理を担当するアメリカ兵たちの映画。主人公はウィリアム・ジェームズ二等軍曹。前任者が映画冒頭で爆弾処理中に死亡したため、後任としてチームに合流した。

感想

フィクションだしストーリーはあるんだけど、どこかドキュメンタリーぽかった。主人公は常識破りな方法で爆弾を次々処理していく。

リアルに感じたのが以下の描写。

  • 携帯電話の電波で爆弾が爆発してしまうため、街中で爆弾処理してる最中に近くでこれ見よがしに携帯を使う人物がいたらテロリストであるかどうかを確認せずに射殺するしかない。
  • テロリストが善意の市民を脅して爆弾を体に巻き付けて自爆テロをやらせることもある。善意の市民ぶってても非常に怪しい。敵と味方の区別が非常に付けにくい。
  • 普通の戦争映画だと、スナイパーの撃ち合いとかすぐ終わっちゃうけど、砂漠での狙撃戦はとてもリアルだった。四方を砂に囲まれた砂漠でどこから狙われるか分からない。伏せて敵を探し、スナイパー同士が息をつめて狙撃しあう。長時間集中を迫られる消耗戦の様子がとてもリアルだった。

一方で、後半からストーリーがロールプレイングゲームっぽくなる感じが違和感があった。軍の作戦とかとあんまり関係なく、たった三人の爆発物処理班で敵の追跡とかやっちゃう。

『ブラックホークダウン』のような恐ろしさはないけど、戦場の緊迫感が伝わってくる映画だった。

戦争は派手にドンパチやっておしまいなわけじゃなくて、その後の占領期にはテロリストとのゲリラ戦もあるわけで、人間は何のために戦争するのかわけがわかりませんね。

ブルーノ

評価 : ★☆☆☆☆

あらすじ

ブルーノはオーストリア人ファッションレポーターのゲイで、ヨーロッパのファッションショーを荒らして目立とうとしてた。しかしあらゆる会場でトラブルを引き起こし、ヨーロッパに居場所が無くなってしまった。こうなったらハリウッドに移ってセレブになろうとアメリカに渡のだが…。

感想

ボラット』のサシャ・バロン・コーエンの映画。『ボラット』が痛快だったので期待して見に行ったんだけど残念な出来だった。

そもそも映画のテンポが悪い。ぐだぐだしてる。はっきりとしたストーリーらしいものがあるわけではなく、あちこちをドタバタしながら行ったり来たりする。結構疲れる。

しかしポイントポイントでは笑えるネタが用意されている。占い師のところにいってブルーノ(サシャ・バロン・コーエン)がエアフェラチオをするシーン(過剰にリアル)とか、パレスチナに行ってユダヤ人とパレスチナ人の仲を取り持とうとするところとか(「お互いを殺しあうのはやめて〜殺すならキリスト教徒〜」みたいな歌を歌う)、アフリカの子どもを養子にもらってアメリカに戻り、黒人が沢山住んでる地域のトーク番組に出るんだけど、そこで子どもをiPodと取り替えっこしてきたとか言うシーン、こういうのはいちいち毒が効いていて面白い。平和を呼びかけるのはU2のボノとかまねで、アフリカの子どもを養子にもらうのはアンジェリーナ・ジョリーのまね。セレブのまねをしてたら自分もセレブになれるだろうという魂胆。強烈な風刺ですよね。

エンディングもなかなか秀逸で、セレブのそっくりさんたちが沢山出てくる。スティングとかColdplayのクリス・マーティンとかかなり本人そっくりで最初本物が出てるのかと思った。

ただ、欧米ネタ中心だし、ゲイネタもきついので特殊な完成の持ち主にしか受けないと思う。熊本のDenkikanは一週間、一日の上映一回のスケジュールでしか上映しなかったけど妥当な判断だったと思います。

ちなみにブルーノを演じてるのがサシャ・バロン・コーエン本人だってのはエンドロールまで気がつかなかった。劇中ではドイツ語の台詞もしゃべるし(オーストリア人という設定なので)、アメリカではドイツ語なまり風の英語を話す( with の代わりに mit を使うとかね)。さすがケンブリッジ卒、細かいところまでこだわる。

ずっとあなたを愛してる

評価 : ★★★☆☆

あらすじ

社会派フランス映画。主人公は刑期を終えた中年女性ジュリエット。空港でたばこを吹かしているところに年の離れた妹レアが迎えに来る。しかしどこかぎこちない。いったい彼女の罪は何だったのか。離ればなれだった姉と妹の過去をたどる映画。

フランス映画には二種類あって、ひたすらシャレオツで抽象的な映画と、この映画のように現実的な映画。僕はこういった感じの現実的なフランス映画は好きだ。ちなみに今回はもろネタバレです。

ジュリエットは自分の子どもを殺した罪で刑務所に入る。しかし年の離れた妹は事情を良く飲み込めない。両親は姉の存在を忘れるように彼女を育てる。

再会しても、ジュリエットはレアに対して「どうせ私のことなんて忘れていたくせに」という態度をとる。レア自身もそうだったのかも、という気分になるんだけど、日々を過ごしていくうちにお互いへの理解を深めるようになる。

レアもレアの夫リュックも最初はすごくジュリエットのことを警戒する。家の外でも、就職先としてソーシャルワーカーっぽい人に紹介された事務所で過去の罪を問われ、侮蔑的な言葉を浴びせかけられる。ジュリエットがなぜ自分の子どもを手にかけたのかが分からないから、子殺しの変質者だとみんな思う。

でも実際は違っていて、ジュリエットはかつて医師であり、自分の子どもが難治性で激痛が伴う病気であることを知っていた。生きていても苦痛が続くだけで治る見込みのない我が子の命を絶ったのだった。

レアはジュリエットが大切に持っていた息子の診断結果が書かれた書類を偶然発見して事実を知る。また自分が手帳に姉がいなくなってからの日数を毎日を書き留めていたことを思い出し、姉に手帳を見せる。そして言うのだ。「ずっとあなたを愛してる」って。

フランス人は先進的な人だから他人の過去なんて詮索しないんじゃないかというイメージを勝手に持っていたけど、まるで日本の村社会のようにジュリエットの過去を詮索し、過去を暴こうとする連中が何人か出てくる。この辺が意外だった。

ボーイズ・オン・ザ・ラン

評価 : ★★★★☆

あらすじ

主人公は中小企業に勤める29歳のサラリーマン田西敏行。職場の年下の女の子に恋をしていい感じになるものの、自らまいた種で失恋してしまう。のみならず、ライバル起業の敏腕営業マン青山に彼女をとられた挙げ句、妊娠させられてしまう。がびょーん。怒り狂った田西は青山に決闘を挑むのだが。

感想

原作は漫画らしいです。映画館に貼ってあるポスターがあまりにも迫力があったので見てしまいました。主人公を演じたのはパンクバンド、銀杏BOYZの峯田和伸という人。僕はそういう予備知識なしに見たんですけど、とても良い映画でした。楽しかったです。

青春スポ根ものな感じもするんですけど、僕はどっちかって言ったら日本版『(500)日のサマー』みたいな印象を受けました。「えっ! (500)日のサマーはあんなにお洒落なのにこんなの全然違うよ!」って思う人もいるかもしんないけど、主人公のダメダメ加減がとても似てると思った。たしかに(500)日のサマーのトムは夢精したり女の子に「やらしてくれよぅ」と情けなく言ったりはしないけど、女の子の気持ちを考えられなくて自己中なとこなんかは結構似てると思った。

田西はとにかく痛いキャラで、妙な見栄を張ったり性欲が旺盛だったりとかとても情けないんだけど、僕が映画の中で一番痛々しいと感じたのが、ヒロインと付き合えてもいないのに、青山に彼女のこと「こんど貸してあげよっか」なんて言うところ。もう最低最悪でぐうの音も出なかった。なんでそんなこと言うのかなぁ。意味もなく悪ぶる必要なんてないのに。

一方でなんとなくこの田西の痛々しさは他人事じゃないような感じもする。自分だって虚勢を張ったり、自己中心的になったり、妙に自信がなかったりすることがある。自分では気づかないうちに身近な人の気持ちに配慮することなく自己中心的な言動をしたり、思っていることとまったく逆のことを口にしたり。ほんと人ごとではなかった。

それでも田西は純情に好きな女の子のことを思って一生懸命やるんだけど、結局空回りでかっこわるくて女の子からは嫌われる…。自分のことを見ているみたいでとても辛かった。押さえきれない衝動を抱えた男は結局走るしかないのだ!

蛇足

ちなみに銀杏BOYZが歌うエンディングテーマ『ボーイズ・オン・ザ・ラン』がとても良いです。iTunesでダウンロードして何回も聞きました。なんか聞いてるだけで涙出てくる。

さらに蛇足

田西の勤め先の齋田産業の社長役でリリー・フランキーが出てきます。リリー・フランキーはなんか若い女優とかと浮き名をはせていそうでいけ好かないイメージだったんですけど、とてもいい雰囲気出してて良かったです。名脇役だった。

息もできない

評価 : ★★★★★

あらすじ

主人公はチンピラのキム・サンフン。大学の学生デモを粉砕したり、無許可屋台の撤去などの実力行使や、借金の取り立てを行って暮らしている。偶然、道ですれ違った女子高生ヨニと仲良くなり、お互いの孤独な心の隙間を埋めるように交流を深める。

感想

正直なところ韓国映画は見た後重苦しい気持ちになるやつが多いのであまり見たくはなかったんだけど、ちょうど福岡に出てきていて暇だったし、しかもタイミング良く監督・主演ほか5役をこなしたヤン・イクチュンの舞台挨拶があるらしかったので鑑賞してしまいました。重苦しい気持ちにはなったけど見て良かったです。

冒頭から度肝を抜かれる。男にいじめられてる女を助けたかと思うと、道にしゃがんで泣いてる女につばを吐きかけ、びんたをくらわせる。正義の味方なのか悪なのか分からないのが主人公であるキムサンフン。でもビジュアル的にはヘアスタイルといい、ださい長袖ポロシャツといい、日本で80年代に跳梁跋扈していたようなヤンキーそのもの。

日本の漫画によくある、ヤンキーだけど実はいいやつみたいな安易な展開にはならない。例えばドラえもんの劇場版のときのジャイアンみたいな感じにはならない。基本的にキムサンフンは常に悪。借金の取り立てに行っては我を忘れて血だらけになるまで相手を殴る。容赦ない。なんか血と骨に出てくるビートたけしみたいだ。

極悪なサンフンだけど女遊びなどには興味がないようで、腹違いの姉の息子である甥っ子に小遣いを与えたりゲームを買ってあげることだけが楽しみ。また借金の取り立てに行っても子どもの前では絶対に暴力をふるわない。その辺に救いがある。女子高生ヨニと会うときだって、性的な展開をいっさい感じさせない。正直サンフンのビジュアルは若い女が目の前にいたら五秒で強姦しそうなくらいに凶悪なのに、そのギャップが良かった。

ヨニはヨニで家庭に複雑な問題を抱えている。父はベトナム戦争の帰還兵で精神を病んでいるし、兄ヨンジェ(公式サイトでは弟と表記されているけど、ヨニが高校生でヨンジェは高卒という設定だから、ヨニは「弟がいる」とサンフンに言うけどこれは嘘で、弟ではなく兄が正しいはず)は学校を出ても働かずにフラフラしており、ときおりヨニに小遣いをせびる。二人とも最低の環境で生活しており、心の支えとなってくれる相手を求めていた。

なぜサンフンが凶暴な男になっていったのかは映画を見ていけば分かるんだけど、彼なりの復讐であったのではないかと僕は解釈した。しかしその復讐は何も生み出さない。誰かを不幸にし続けるだけなのだ。サンフンは最後にそのことに気がつきかけるのだが、運命はあまりにも皮肉だった。

監督舞台挨拶

上映終了後にたまたま福岡に来ていたヤン・イクチュン監督が舞台挨拶にやってきて、話を聞くことができた。映画の中のキム・サンフンとは打って変わって、コンバースの長袖Tシャツにニット帽をかぶり、黒縁メガネをかけていて今風の若者ぽかった。冗談好きな人で、よく笑っていた。もしこの舞台挨拶を見ていなかったら、ものすごーく暗い気分のまま劇場を出ていたと思う。監督が明るい人柄だったので映画の内容を相対化することができ、なんだか救われた心地だった。

フローズン・リバー

評価 : ★★★★★

あらすじ

アメリカとカナダの国境付近に暮らす貧しい白人女性レイの話。貧しいながらも家を買いトレーラーハウス暮らしに別れを告げる予定だったが、ある日夫が住宅の購入資金を持って蒸発した。期限内にお金を払わないと手付け金がパーになり家を買えなくなってしまう。レンタル家具など様々な支払い期日が迫っており一日も早く夫を見つけ出すか現金を用意する必要があった。困窮したレイが選んだ選択肢とは。

感想

すごい映画だった。貧しい白人の話というのは貧しい黒人の話よりも悲惨になる場合がある。

特に悲しいのがレイの長男TJ。責任感とか使命感が強くて、貧しい一家のためにアルバイトをしたいと申し出るんだけど、まだ15歳だからダメだといって母親は取り合わない。でも実際は子どもたちの毎日の昼食代にも事欠くような状況で、息子は息子なりに詐欺師っぽいアルバイトに手を染めたりする。

レイは失踪した夫が乗っていた車に乗るネイティブアメリカンの女ライラを捕まえて車を奪い返すんだけど、実はその女は密入国の斡旋業者で、ひょんなことからレイもその仕事に手を染めることになる。「白人は警察に怪しまれないから」とライラは言う。

日本で普通に暮らしてると、アメリカと言えばオバマとかシリコンバレーとかサブプライムローンとかイラク戦争とか沖縄の海兵隊とか、そういう部分にしか思いが至らないんだけど、アメリカにはネイティブアメリカンの問題があることを思い出させられた。

ネイティブアメリカンには部分的な自治が認められていて、彼らが暮らす居留地には警察は立ち入ることができない。フローズン・リバーとはアメリカとカナダの居留地にまたがった河が冬季に凍結してできる秘密の道のことを指しており、ライラとレイは万一警察に見つかっても安全なこの道路を使って密入国の幇助をするのだった。

レイがなかなか勤め先の100円ショップで正社員として働かせてもらえず経済的に困窮する様子や、長男のTJが少しでも家の役に立とうとバーナーを使って大工仕事をしようとする様子がとても切なかった。まるで大草原の小さな家を見ているかのよう。アメリカの白人っていうとみんなそこそこ裕福で楽しく暮らしてるようなイメージがあるんだけど、中より下の階級のアメリカ人は医療保険にも加入できず、満足な医療も受けられないまま死んでいったりしてる。中途半端なプライドがあるから人の施しに頼ることもできず、貧乏なマイノリティの映画とはまた違った悲しさがある。

ドキュメンタリーとドラマで全然ジャンルは別物だけど、僕はなんだか『アンヴィル』にも通じるものを感じました。かなりすごい映画だった!

誰がため

評価 : ★★☆☆☆

あらすじ

第二次大戦中、ナチスドイツに占領されてた頃のデンマークの話。レジスタンス活動に身を置く二人の男が主人公。祖国の自由のためと信じて行ってきた活動が実は…。

レジスタンス活動っていうと崇高なものととらえられがちだけど、実はレジスタンスの中にも悪いやつがいて、実行部隊が悪いやつにいいように利用されていたこともある、みたいなストーリー。実行部隊のうちの二人に焦点を当てているんだけど、二人とも祖国の自由のためと信じて家族を犠牲にしたり、信条に反する行い(女性を殺す)なんかをやるんだけど、後の方になってナチスの協力者を殺しているつもりが、反ナチス活動を支援していた人物を殺害していたことが判明して衝撃を受ける。

知っておかなければならない歴史の真実だとは思うけど(この映画は実話ベース)、全体的に暗くてあまり好きにはなれなかった。カメラワークも不自然。ドキュメンタリーっぽさを出したいのか、不自然な寄りや引きがある。ただ、二人の人物が会話しているシーンで、話している人物の目にフォーカスを合わせ、その人が話し終えたら次に話をする人物の目にフォーカスを合わせるテクニックは、スリリングな会話の雰囲気を伝える演出効果があったと思う。でもやっぱ慣れなかったけど。

蛇足だけど、デンマーク語は全然分からないのに見ていて「???」みたいな感じにならないのはゲルマン語だからかなと思う。ドイツ語よりも英語に言葉の響きが近くて、不思議な心地よさがあった。

ポータルシットの方にも感想を書いたことはないんだけど、デンマーク映画では『恋に落ちる確率』という映画がとても好きです。なんかこっちの方を見返したくなる映画でした。