北アルプスから帰ってきたあと「二丈岳に行ったけど物足りなかった」とぼやいていたところ同僚に福吉駅から十坊山、浮嶽、女岳、二丈岳を経て深江駅までの四座縦走をやってのけられ、これに触発されて一ヶ月ほど前に計画したものの雨天や家用でなかなか実現できなかったやつをやった。開始地点を浜崎駅に移して浜玉側からスタートするルートは YAMAP で検索しても活動日記が投稿されておらず四座踏破できたら達成感があるだろうと思ったが、スタートが遅れたこと(朝から風呂で Netflix 見てた。 House of Cards が面白すぎるのが悪い)、途中道迷いで小一時間ほどロストしたことにより最後の二丈岳は断念して十坊山、浮嶽、女岳の三座のみとなった。とはいえ浮嶽も女岳も未踏だったので行けて良かった。天気が最高だったこと、初めて 20km を超える縦走(しかも一人)をやったこと、浮嶽で話した唐津のおじさん(若い頃には北アルプスを踏破し久住も 100 回以上登っておられるとのこと)から浮嶽の絶景スポットや初日の出情報を教えてもらい実りの多い秋の糸島縦走だった。

計画

浜玉側から十坊山に登るのはかつて子連れでやろうとして挫折していて、そのリベンジをかねて四座縦走してみることにした。 9 月の初旬に計画したものの天気が悪かったり家用があったりでなかなか実行に移せず 10 月になってしまった。

出発

週の頭に今週末行けたらいいなとぼんやりと思って天気予報をにらんでいたところ、木曜くらいから曇りのち晴れが晴れに変わり、これは行くしかないと、金曜の昼に会社近くのスーパーでカップラーメンや行動食を買い込む。いつもダラダラ居残ってしまうが、早めに仕事を切り上げ帰宅。朝目が覚めると 4 時半で、これは行けそうだと思ったが、前夜風呂に入らずに寝てしまったため風呂につかってうっかり Netflix で House of Cards を見始めたところ面白すぎて 6 時半を過ぎた頃にようやく我に返る。計画では始発列車で移動する予定だったのにこれではもう間に合わない。風呂から上がり、ささっと準備を整えて最寄り駅まで向かう。

格好

長ズボンにするか短パンにするか迷ったが、まぁ大丈夫だろうということで普段もはいている山と道の短パンをはいていくことに。上は icebreaker のメリノウール T シャツにしたが、朝はやはりまだ寒く YATTEIKI FM のパーカーを羽織る。靴はいつもの Montrail 。つま先のソールが剥がれ始めているのでそろそろ買い替え時かもしれない💸。アルプス遠征の反省を踏まえ荷物は少なめにしたつもりだがやはり一眼レフがかさばる。使わないときはカメラバッグはリュックに収納し、なるべく身軽な状態にする。今回初めてサコッシュを山に持っていったがやはり便利だった。自撮り棒、モバイルバッテリー、 Kindle 、行動食を入れて歩いた。

移動

IMG_6232 最寄り駅のセブンイレブンでおにぎりを二つとコーヒーを買う。筑肥線に乗り浜崎へと向かう。平日の朝はたくさんの人が電車を待つ駅だが、土曜の朝だと人影はまばら。筑前前原駅で唐津行きに乗り換え、浜崎まで 50 分弱で到着した。

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十坊山へ

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浜崎駅から登山口のある谷口集落まで歩く。 YAMAP のルートではだいぶ大回りするように書かれているが、あちらのルートは農道で農業用車両の通行が多いので今回通っている集落を抜けるルートがおススメ。

コースマップのルートに合流し歩き続けるが、分岐に遭遇する。駅から止まらずに歩いていたのでリュックを下ろし水を飲んでおにぎりを一つ食べながら考える。ずっと舗装路を歩いてきたので山道らしい舗装されていない方に行ってみることにした。

しばらく行くといきなり選択を誤ったかと思えるような光景に出くわす。水害の影響か、道が崩落している。注意しながら踏み外さないように通り抜けて先に進む。

再び舗装路になるが、しばらく行くとどうも様子がおかしい。やたら蜘蛛の巣が多くなり、雑草が背高く生い茂っている。道の荒れ具合が人通りがないことを物語っている。短パンで来たことを少し後悔する。毒々しい色をした大きな蜘蛛の巣をくぐりながら進んだところでふと YAMAP を開くとルートから外れていることに気がつく。地図を見ると強引に先に進めばルートに合流しないこともなさそう。戻るべきか進むべきか。しばし迷ったがヤマケイ新書の遭難本に書いてあったことを思い出し、来た道を引き返すことにする。人間、これまで登ってきた道を戻ることには抵抗があるのだろう、戻る前は随分進んでしまっていたように感じたが、いざ戻ってみるとルートを外れた地点まではすぐだった。しかし肝心の分岐しているはずの正規ルートが見つからない。なんと、先ほど見かけた崩落地点で分岐しており、脇の方にある舗装路ではない野道の方が正解だったのだ。これは分かりにくい。気を取り直し、野道の方を進む。野道だが人の通りがあるのか先ほどの道のように蜘蛛の巣地獄ではなく、草の背丈も程々で非常に歩きやすい。しばらく進むと視界がひらけ、湿地のような場所に出た。また道が舗装路になり快調に歩いた。

十坊山には川はないかと思っていたが、今回歩いた道は途中で沢の横を通り川の音を聞くことができた。この道は林道のようで、あたりはぎっしりと杉が植えられている。杉に覆い尽くされ昼間でも真っ暗になっている場所があり、阿蘇山の登山道を思い出す。蜘蛛が三つに並んで巣を作っていてタバコの煙をプカプカさせているようで面白かったので写真に撮った。

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暗いあたりを過ぎると明るくなる。東屋と芝生が見えたので公園でもあるのかと思ったがゴルフ場の敷地で外からは入れなくなっている。

しばらく進んで漸く十坊山の南登山口に到着した。ここからやっと山登りらしい道になる。十坊山にこちらから登る人は少ないようで登山道は荒れている。杉の葉が大量に落ちておりカラフルな絨毯のようだった。

森の中を淡々と進むと程なく白木峠からのルートと合流した。ここからかなり角度が急な坂を登る。あっという間に山頂に着く。時刻は 11 時半過ぎで、山頂には家族連れや女性二人グループなど先客がいた。当初の予定では浮嶽で昼食を取る予定だったが、すでに昼近くだったのでここで昼食をとる。山頂ではすすきが穂を垂れ始めており秋の気配が強まっていた。坊主岩に登って著者近影をキメてそそくさと退散し浮嶽へ向かう。

浮嶽へ

十坊山から白木峠の方に下る。下りには何組かの小さい子ども連れの家族とすれ違った。下りはすぐだった。白木峠から浮嶽への登り口は十坊山の登り口と道路を挟んで向かい側にある。土留めコンクリートに小さく看板があるだけなので少しわかりにくい。

白木峠から浮嶽へのルートは単調だった。ゴルフ場の脇を通るルートで、時々ゴルフに興じている人たちの絶叫や叫び声が聞こえて変な気持ちになる。一旦 360m まで下って 800m まで登るので 400m 超を駆け上がるが、山頂まではずっと同じような道が続き疲労感が募る。森の中で景色に変化がないので写真を撮ることもなく、一眼レフを胸にくくりつけてるのがアホらしくなってきてカメラバッグに収納しカメラバッグごとリュックサックの中に納めた。

浮嶽では数人とすれ違ったが、挨拶をしたのに返してもらえなかった。聞こえなかったのかなと思って思わず二度挨拶しそうになった。糸島の山は挨拶しない主義の登山者が多いのかもしれない。一人の中高年男性ほど挨拶を返してくれない傾向にあると思う。

そうこうしている間に浮嶽に着いた。浮嶽山頂は立派な杉の木が植えられており、神社もあって厳かな雰囲気がある。写真を撮り、リュックサックを下ろして休憩していると長靴に作業着で軽装の地元の人とおぼしき人がやってきて神社にお参りしていた。こんにちはと挨拶すると、縦走かと聞かれてしばし話し込んだ。この方は唐津の農家で、若い頃北アルプスを踏破し、久住にも 100 回以上登っておられるとのことだった。いまは農業が忙しく遠出ができないためこうして近所の浮嶽に仕事の合間に登りに来ているのだそう。自分が今夏北アルプスに行った話をすると話が弾み、浮嶽の絶景スポットや初日の出が見えるスポットを教えてもらった。

荒谷峠までおじさんの車で乗せて行こうかと言われたが、せっかくなので歩こうと思って辞退し、歩いて荒谷峠へ向かった。荒谷峠へは山道と舗装路の二つがあるが、併走しているので最終的には同じところに辿り着く。自分はコースタイムが短かった舗装路の方を選んだ。歩きながら見えた浮嶽の姿は非常に立派だった。唐津のおじさんに教えてもらった絶景ポイントも最高で、標高が高いため十坊山よりも二丈岳よりも景色が良いかもしれない。また来たいと思った。行動食のトレイルミックスを食べながら優雅に舗装路を下った。

女岳へ

荒谷峠に着いて、女岳に登るかスキップして真名子まで行き二丈岳に登るか迷った。すでにこのとき時間は 15 時半を回っており、四座踏破は無理だろうなと思っていた。女岳は眺望もないと聞いていたし、登る価値がないかもしれないと思っていたが、二丈岳には何度も登ったことがあるしそもそも真名子まで女岳を経由してもしなくても所要時間は変わらない、それなら女岳に登って二丈岳をスキップし、深江に降りる予定を大入に降りようと考えを改めた。真名子からゆらりんこ橋へのルートは過去に通ったことがあるし、日が落ちてしまっても何とかなるだろうと考えた。

女岳にはすぐに着いた。登山道は杉林ではなく雑木林で鬱蒼感が多少ましで好きな雰囲気だった。 16 時前に着いたが山頂は誰もおらず、温度計を見ると気温は 10 ℃だった。立ち止まると体が冷える。ナイロンパーカーを羽織って寒さを凌ぐ。数枚写真を撮って足早に下山した。

もう体力が尽きかけていたのか、女岳ではリュックサックから一眼レフを取り出して写真を撮る気力が沸かなかった。眺望が悪いときいていたものの、自撮り棒を使って高い位置から海の写真を撮ることができた。

真名子方向におり始めてすぐにとても大きな石を見た。白馬岳ルートの天狗が原で見たやつよりも大きく感じられた。カメラで写真を撮るべきだろうなぁとは思ったが、疲労と寒さが勝り先を急いだ。

真名子へ

女岳の下りから北アルプス遠征で痛めた左膝が痛み始めた。普段の生活では痛まないが、山登りの下りで痛むようだった。どうもこれは持病になってしまったみたいだ。自分はもう死ぬまでこの痛みと付き合っていかなければならないのかもしれない。もうアルプスのような高い山にも登れないのかも知れないと思うと悲しい気持ちになった。

真名子への下りでは誰とも出会わなかった。途中、車道に出ることが何度かあって、そのとき脇を車が通り過ぎていった。キャンプ場に向かう人やアウトドアテーマパークから帰る人たちだった。どうせ二丈岳には登らないのだからこのまま車で帰りたい、親切な人が乗せてくれないかななどと思いながらも歯を食いしばって歩いた。このあたりでは疲れてほとんど写真を撮っていない。

だいぶ下って舗装路に出て、見慣れた真名子の研修棟のところに着いた。二丈岳への登山口はスルーして賀茂神社に向かう。飲み水が少なくなっていたので水場で補給させてもらう。

ゆらりんこ橋へは慣れた道だったが左膝が痛み、ほとんど一人で絶叫しながら降りて行った。

ゆらりんこ橋から大入へ

何とか日が残っているうちにゆらりんこ橋に着いた。ただここからまだ大入まで 4km 弱ある。最後の力を振り絞って歩く。 YAMAP の活動距離を見ると 17km ほどになっていた。こんなに歩いたのは初めてで、大入まで行くと 20km を超えるだろうと思った。

大入駅の前にコンビニがあったはずだからコンビニでビールを買って飲むことを楽しみに歩き続けた。車ではなく電車で来て縦走しているのでそういうことができる。

大入駅手前まで来たところで夕焼けがとても綺麗だったので再び一眼レフを取り出して何枚か写真を撮った。パタゴニアのロゴみたいな色の空が撮れた。

何とか大入駅に辿り着いたが、駅前のコンビニは閉店してしまっておりビールを買うという夢は打ち砕かれた。荷物を軽くしようと賀茂神社でくんだ水は途中で捨ててしまっていたので飲むものがなくどっと疲れが出た。加えて電車を待つホームを間違えてしまい、下りホームにいたところを親切な人に「そっち上り電車来ませんよ」と教えてもらって慌てて階段を駆け上がって反対側に移動し、何とか帰りの電車に載ることができた。筑肥線の筑前前原以西は電車の本数が減るので、ホームを間違っていることに気づかずこれを逃していたら帰宅が一時間くらい遅れていたかもしれない。最後に散々な思いをしながら放心状態で自宅最寄り駅まで電車に揺られ帰り着くことができた。

所感

初めて一人で縦走をし、 20km 以上も歩いた。低山だと侮っていた糸島の山も立て続けに三座登ると足がぱんぱんになり、非常に達成感があった。

一方でやはりまだまだ自分は初心者で、ゆっくり目に引いてある YAMAP のコースタイムよりも遅いペースでしか歩けないことがよく分かった。出発が 2 時間近く遅れたものの、飛ばせばそのうち挽回できて二丈岳にも回れるだろうと思っていたが全くそんなことはなく、四座目の二丈岳を断念しなければならないのは残念だった。なかなか一人で一日使って登山できることはないので貴重な機会を逃してしまったのもしれない。

もしまた実行できるチャンスがあれば、深江側から二丈岳、女岳、浮嶽、十坊山を縦走して浜玉側に降りるやつをやってみたい。そのときは是非ビールを買って帰りの筑肥線で海を見ながら飲みたい。

白馬岳

仕事で長野県、富山県、新潟県の県境に跨がる北アルプスの白馬岳に行った。山行記録はこちら。

当初は以下のように栂池高原 -> 白馬岳 -> 朝日岳 -> 蓮華温泉という縦走の予定だったが、台風が近づいており、急遽予定を短くして栂池高原 <-> 白馬岳のピストンとなった。 YAMAP の活動日記に書いているとおり体力不足で、15kg の荷物とカメラバッグが肩に食い込んでいたこと、また往路で転倒して左膝を岩場で強打したことによりかなり膝が痛む状態だったため、もし縦走で三日目があった場合は途中で離脱してしまっていたかもしれない。

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アルプス、日本なのに「アルプス」みたいな名前は変だしいけすかない、山は生まれ故郷の阿蘇や久住が一番だ、という思いを持っていたけど、実際行ってみるとスケールが全然違った。盛夏でも雪が溶けずに残る雪渓、森林限界を超えたあとに広がる景色、稜線を境に長野側と富山・新潟側の両方の景色を眺めることができる高さ、山小屋泊、夜の星空の美しさ、全てにおいて圧倒されてしまった。そもそも日本アルプスという名前も日本人が勝手に名乗り始めたわけではなく、明治時代に来日した鉱山技師のウィリアム・ゴーランドというイギリス人が命名し、宣教師のウォルター・ウェストンがヨーロッパに名前を広めたものらしい。なんで Japanese Alps という英語表現がオリジナルということになる。

日本アルプス - Wikipedia

アルプスの素晴らしさは上に書いた通りだが、夏でも頂上付近は夜になるとダウンジャケットが必要になるくらい寒く、また天候が悪化すると下界よりはるかに厳しい気象条件となり、稜線や岩場を歩く際は凄まじい風に体を持って行かれそうになる。重い荷物を背負った状態でちょっと足運びを誤ると転倒して滑落し、傾斜が急な長野県側に落ちた場合はほぼほぼ命を落とすことになる。雨が降れば気温が下がり、雨具を持たない場合は夏でも低体温症になってしまう。

語弊を恐れずに言うと高い山に登るのは博打に近いよなぁと思った。すばらしい景色、他では見られない景色を見るために命を危険にさらして山に登に行っている感じ。どう考えても家でじっとしてテレビ見たり出かけるにしても街に行って買い物したりしてる方が安全じゃないですか。山に行かなければ死ぬ可能性はとても低い。『岳』という漫画を読むと、山に登って滑落し、手足をタコのようにぐにゃぐにゃに折り曲げて死んでいく人たちが沢山出てくるけど、そういう危険をおかしても行きたくなるようなギャンブルにも似た中毒性が山登りにはあるのではないかと思った。