寿司はうまい。寿司はうまいので寿司と結婚したいと思う人もいることでしょう。しかし寿司は人間ではないので結婚できない。結果的に寿司屋の娘と結婚することになります。
寿司好きなあなたは、寿司であれば何でも食べたいと思う。だから回転寿司だって、午後8時のスーパーの総菜売り場で半額になっている寿司だって好きなはずです。しかし、寿司屋の娘と結婚したばかりにそういった Guilty Pleasure は御法度となります。
「ああいうの食べるなんて頭どうかしてる」
寿司屋の娘はあなたにそう言います。寿司のことが好きすぎて、でも寿司とは結婚できないから寿司屋の娘と結婚したのに、安い寿司が食べられなくなったことでかえってあなたの生涯寿司数は低下するのです。寿司との距離、これがこの文章のテーマです。
24歳のときに病気になってしまった僕は、入院して治療を始める前、生ものが食べられなくなるからと寿司屋で寿司を食べました。治療の合間に一時帰宅が許されると回転寿司に行って吐くまで寿司を食べたりしました。寿司を食べ過ぎて吐くことで自分の生存を確認していたのかも知れません。
病気を克服した僕は、普通の寿司好きと同じように就職して社会生活を営むようになりました。週に二日休みがあれば、そのうち一日は祖母を連れて回転寿司に行くのは独身男性として当然のことだと思います。寿司を空気のようにすら感じていました。
寿司にもっと近づきたい -- 20代の僕はその欲求を抑えることができませんでした。実家を出て、寿司屋の娘と結婚することにしたのです。しかしこのときの僕は、好きなときに自由自在に寿司が食べられることのありがたみを分かっていませんでした。
寿司屋の娘との結婚が僕にもたらしたのは、寿司との離別でした。寿司と僕はもう二度と交わることもない別々の人生を歩むことになったのです。寿司屋の娘と結婚するとはそういうことなのです。僕は寿司に近づきすぎたのです。
僕は今日、福岡の高寅という寿司屋で以下の寿司を頼みましたが、大トロは寿司屋の娘であるところの妻に食べられました。
代わりに僕は以下の赤身を食べさせられました。
おわかり頂けたでしょうか。寿司屋の娘と結婚するとはこういうことなのです。
あなたが本当に寿司のことを愛しているのならば、寿司には近づきすぎない方が良い。寿司とは適切な距離を保つべきなのです。
この記事は 寿司 Advent Calendar 2013 - Adventar の 9 日目でした。明日は watilde さんです。