| @読書

旧東ベルリン名物「テレビ塔」 以前読んだ『プラハの春』の続編である(portal shit! : 『プラハの春』読了)。まぁ面白かったけど、過剰な性描写が煩わしかった。結局、著者が若い頃いかにもてたかが綴られているわけである。お人形さんみたいな顔をしたドイツ人女性と恋をしたいという、どうしようもない中年オヤジの妄想を満たすには十分かも知れない。性描写の頻出度合いといい、総じてオッサン向けの本である。

 著者は「共産主義は本質的にペテン」だと主人公に何度も語らせ、共産主義の虚構性について語ろうとしている。一般市民は生鮮食品を十分に口にできず苦しんでいるのに、共産党の幹部は良い暮らしをしているとか、そういった共産主義の矛盾を物語ろうと躍起である。しかし僕が驚くのは、外交官の贅沢な暮らしぶりである。海外に駐在する外交官は高価なブランド品を身につけ、メルセデス・ベンツやBMWを乗り回し、パーティーに明け暮れ、高級住宅街に住むのである。服や車は私費で買っているのかも知れないが、パーティーや住居費は税金が使われているはずで、共産党の幹部もひどいが、それを批判する外交官も血税で随分贅沢をしているようで矛盾を感じた。

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| @映画/ドラマ/テレビ

 アカデミー賞監督賞受賞作である。数々の映画賞で賞に輝き、作品賞の本命候補だと言われていたが、結局は『クラッシュ』にかっさらわれてしまった。同性愛がテーマの映画は、やはりアメリカでは不遇な扱いを受けるのだろうか。

 肝心の映画の内容自体はわりと良かった。これは同性愛を描いた映画というよりも、許されざる恋を描いた純粋な恋愛映画として考えるべきだろう。たまたま愛し合った二人が同性で、住んでいる国がアメリカだったということだ。

 大まかなあらすじ。職にあぶれていたカウボーイのジャック・ツイストとイニス・デルマーは、羊飼いのアルバイトを一緒にこなすことになった。二人は羊を連れてブロークバック・マウンテンに登り、二人きりで一夏を過ごす。ブロークバック・マウンテンは夏でも凍えるような寒さで、ある夜テントの下で身を寄せ合って寝ていた二人は体を重ねてしまう。下山した二人はそれぞれ家庭を設け父として夫としての役割を果たしていくのだが、お互いのことを忘れることができず、四年後にジャックがイニスを訪れ、燃えるような恋が再開される。いったいどんな結末が二人を待ち受けるのか。

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| @雑談

瀬田の桜 前回の入院のことは書きませんでしたが、本日再び入院して明日から塩酸イリノテカン・ネダプラチン併用療法の2コース目を受けます。今日、採血して腫瘍マーカーをはかったら、なんと1コース目の治療前よりも数値が上がっていました。これはすなわち、いまのところ薬が効いていないということです。前回の治療前にあった違和感が取れていたから、よもや薬が効いているのかもと期待していましたが、現実は厳しいものがあります。このまま薬が効かなければ余命二年もないわけで(もっと短いかも知れない)、ここ数日の友人たちの来訪で忘れかけていた死への恐怖が舞い戻って参りました。

 しかしくよくよしてばかりもいられないので、CT撮影と入院時の検査が終わってから映画を見に行きました。アカデミー賞監督賞を受賞した『ブロークバック・マウンテン』です。しかし本稿は単なる日記ですので、映画の感想は別の記事で記すことにします。

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| @映画/ドラマ/テレビ

 正直あまり期待していなかったが、良い映画だった。これは読者の方にも是非見てもらいたい。

 ルワンダには大まかに分けてツチ族とフツ族という二つの民族がいた。ツチ族は侵略してきたベルギー人に取り立てられ、国を統治した。これがためにフツ族の不満が高まる。ベルギーから独立してしばらくした頃、クーデターが起き、人口で圧倒的多数を占めるフツ族が実権を握るが、その後も政情不安定な状態が続き、1994年、フツ族の大統領が暗殺されたことをきっかけにフツ族の民兵が蜂起し、ツチ族に対するジェノサイド(大量虐殺)が始まる。その当時外資系の高給ホテルに勤めていたフツ族のポール・ルセサバギナは、白人の上司や宿泊客が国外に脱出していくなかでホテルを切り盛りし、ツチ族の難民をホテルにかくまう。実話を元にした映画である。

 ホテル・ルワンダは当初日本で公開予定がなく、熱心な人々の署名活動によって漸く公開にこぎ着けた映画である(『ホテル・ルワンダ』日本公開を応援する会)。この経緯自体が、ルワンダが置かれていた状況を表している。ルワンダではわずか100日間の間に100万人以上の人々が殺されたといわれているのに、国際社会は救いの手を差し伸べはしなかった。欧米の先進国家は、ルワンダに滞在する自国民を救出するとさっさと軍隊を引き上げてしまう。国連軍も「我々はピース・キーパー(平和維持部隊)でありピース・メーカーではない」として、虐殺を止めようとはしない。結局のところ白人どもは、平生「人権人権」と叫んでおきながら、白人が住んでいるところか、油が湧き出るところにしか関心を示さないのである。ただのアフリカ人、ただのアジア人が圧政に苦しみ人権を弾圧されていても、知ったことではないのだ。ルワンダでツチ族とフツ族がいがみ合うようになったは、白人たちの統治政策のせいであるというのに。

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| @映画/ドラマ/テレビ

 ナチスに抵抗運動を行った学生たちの話。ナチスはひどいなぁ、全体主義は嫌だなぁ、という思いを新たにした。しかし如何せん、暗すぎる。物語に救いがない。暗黒の世界の出来事が最初から最後まで続く。疲れる。

 白バラという抵抗グループの学生たちがヒトラーを批判するビラをばらまく。メンバーのゾフィー・ショルとハンス・ショルの兄妹は、自分たちが所属する大学でビラをまき運悪く捕まってしまった。ゲシュタポに尋問を受け、協力者のことを白状すれば命は助けてやると交渉を持ちかけられるが、これを拒否する。結果、彼らはギロチンにかけられ処刑されてしまう。

 最初から最後まで、ほとんどの出来事が建物の中で完結することが映画に閉塞感が漂わせている。当時の雰囲気を残す街並みが少ないからこれは仕方ないだろう。とにかく息が詰まる。加えて裁判の場面で、一緒にとらえられたメンバーのひとりが「秘密を何でも喋る、だから自分だけでも助けてくれ」と仲間を裏切るようなことを口にする。まるで救いがない。

 ナチスがつけていた記録を元に史実に忠実に作られた映画らしいが、もう少し他に表現方法がなかったのかと思う。大事なことを扱った崇高な映画だとは思うが、映画や物語には喜びというか、救いのようなものが必要だろう。ドキュメンタリー向けのテーマだと思う。

| @雑談

 Winnyによる情報流出事件なんかを扱うテレビ番組を見ていると、情報を流出させた役所の情報管理の甘さが非難されることがほとんどだ。Winnyを使っていた個人の倫理観の欠如を問題視するような報道のされ方はしない。これには違和感を覚える。

 もちろん、情報を流出させた人がまったく著作権フリーなファイルだけを取り扱っていた可能性も確かにある。でも全員がそうだとは到底信じられない。みんな著作権で守られている映画や音楽のファイルをタダで手に入れたくてWinnyを使っていたはずだ。業務用のパソコンが足らなくて私物パソコンを使わせていた役所よりも、Winnyを使っていた阿呆な個人の方が圧倒的に悪いと思う。

 結局、マスコミは役所などの公的機関を批判したいだけなんじゃないだろうか。ここらで大手新聞社かテレビ局の社員のパソコンから情報が流出すれば面白いんだけどなぁ。でも彼らは高給取りだからWinnyなんて使わないかも知れない。

| @映画/ドラマ/テレビ

 大杉漣主演の『ライフ・オン・ザ・ロングボード』を見た。端的に感想を述べるなら、まれに見る駄作である。よって★ゼロ。見る価値なしである。見ようかなと計画していた人は見ない方がよい。時間と金の無駄である。

 もともとあまり邦画は見ない方なのだが、去年『運命じゃない人』を見て以来、邦画にも面白いものがあるからうっかりしてると見逃しちゃうな、と心を入れ替えた。この映画は予告編も面白そうだったしね。さらにDenkikanのフィルターを通してある。Denkikanは社長がすべて試写を見て面白いと思ったものしか上映しないそうだから、駄作に当たることは希である。ところが、この『ライフ・オン・ザ・ロングボード』は見事に期待を裏切ってくれた。

 食品メーカーに勤める主人公は55歳で定年を迎え、若い頃にかじったことがあるサーフィンをやろうと思い立って種子島に向かう。そこで若者や現地の人々と触れ合いながら人生について、家族について見つめ直すという、マンガのような内容の映画である。ぶっちゃけ、この数行の文章を読んだだけでもう十分。あなたは映画館に足を運ぶ必要はない。

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