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インビクタス‐負けざる者たち‐

評価 : ★★☆☆☆

クリント・イーストウッド監督。南アメリカのネルソン・マンデラの話。モーガン・フリーマンがマンデラ役。大統領就任翌年の1995年、南アフリカは長年アパルトヘイトへの制裁措置として出場が禁止されていた国際スポーツの舞台への復帰が許され、自国でラグビーワールドカップを開催することになっていた。伝統的に南アフリカのラグビーチームは白人主体のチームであり、黒人からはアパルトヘイトの象徴と見なされていた。黒人による“革命”が成し遂げられたあと、黒人たちは代表チームの愛称(スプリングボクス)とジャージー(ユニフォーム)のカラーリングを変更しようとしたが、マンデラはそれを止めさせた。彼の真意は何なのか。

『グラン・トリノ』がすごくよかったので期待していたけど、肩すかしを食った。ラグビー代表チームのキャプテン、フランソワ・ピナール(マット・デイモン)と協力してスプリングボクスを新南アフリカの調和の象徴としようとするんだけど、なんか違う。

全般的にストーリーが単純というか、映画の世界が狭い。マンデラの周辺の人物達の描き方が単純に見えた。一国の大統領の割にはあまり仕事らしい仕事をしてなくて、ラグビーチームのことに熱を上げすぎてる。僕の目には肩入れ具合が不自然に写った、「こんな漫画に出てくるみたいな大統領いないでしょ」って。あとマンデラが聖人君子に描かれすぎ。人間ってこんなに単純じゃないんじゃないかな。大統領就任後に離婚した嫁さんの話とかがない。

もっとも強烈に違和感があったのがラグビー試合のシーン。まるでアメフトみたいだった。ラックやモールに全然人が入らないし、スクラムはやたら選手の腰の位置が高いし、スクラムの中で手を使ってるようにも見えるし、ラグビー知ってる人だったら興ざめする感じの内容だった。決勝でオール・ブラックスと対戦するからってんで無理矢理ジョナ・ロムー(ニュージーランドの怪物ラグビー選手。ウィングなのに120kgも体重があって足が速かった)風の俳優を登場させるんだけど、なんか中国人っぽいし、オール・ブラックスが試合前にやるハカも無理矢理挿入してる感があった。やっぱアメリカ人の監督にはラグビーの映画を撮るのはむずかしいのかな。ラグビーのこととかよく知らない人の方がかえってこの映画は楽しめるかも知れないと思った。

そもそも長らく国際試合をしてなかった南アフリカ代表が、世界最強のオール・ブラックスに勝っちゃうのは、史実ではあるわけだけどとても違和感ある。マンデラが音頭をとって選手達を応援したから勝てた、みたいな描かれ方なんだけど、選手達自身が相当特訓を積んだんじゃないかな。フランソワ・ピナールとマンデラの絆というか交流ばかりに焦点が当てられてなんか違うんじゃね、と思った。

蛇足

僕はどうも英語の映画を見るときは英語の種類の方に目というか耳がいってしまう。南アフリカの英語がどんなものなのかは分からないけど、マット・デイモンやその家族、恋人役の俳優達はイギリス英語ともアメリカ英語とも異なる英語を喋っていたように見えた(南アフリカは黒人は黒人の土着語を話し、アフリカーンスの白人はオランダ語っぽい方言を話すみたい)。完全な蛇足です。