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Basecamp で従業員の大量離職騒動が起きていた。原因は社内で社会問題についての議論を禁止するという制度変更への反発。

この制度変更の背景にはさらにややこしい問題があったようだ。

この騒動を経て、以前 HEY を使ったときの感想として書いた以下の記事のことを思い出した。

ソフトウェアに必要なのは理念ではなく機能だ。そのことは Jason Fried も書いている。

6. No forgetting what we do here. We make project management, team communication, and email software. We are not a social impact company. Our impact is contained to what we do and how we do it.

ただ、 Jason Fried も DHH も本、 Twitter 、ブログで業務の一環かのように他社のソフトウェアやビジネスモデルに難癖を付けたりと舌鋒鋭い。その一方で従業員に社内で社会問題を議論をさせないのは矛盾しているような気がする。

以前書いた記事では、 Flickr は理念のみで機能が不足しているということを指摘した。 Basecamp の HEY については理念だけでなく、それを裏付ける機能があると支持した。しかし今回の騒動を見るに、理念の部分がだいぶ強すぎたと感じる。理念に引き寄せられて opinionated な人たちが集まったが、理念を表明して良いのは経営者だけで従業員は仕事だけして下さいと言われると反感を買うのは当然だろう。

理念や社会に対する意見があることは結構なことだと思う。しかしそれを声高に表明して回ることはソフトウェア会社の仕事ではないと思う。ソフトウェア会社の仕事はただ一つで、その理念に基づいたソフトウェアを作ることなはずだ。

そもそもソフトウェアで社会を変えられるのだろうか。自分はそうは思わない。世の中がソフトウェアをきっかけにして変わるだけだ。ソフトウェアは人々の内側にあった曖昧模糊とした欲求を具現化して解消しただけに過ぎない。 Uber で車と時間を持て余している人がお金を得られるようになったし、全然タクシーがつかまらなくて困っていた人はふっかけられることなく車で移動できるようになった。これは元々潜在的に存在していた需要と供給を顕在化させて結び付けただけだに過ぎない。どんなに画期的なソフトウェアやサービスも、人々に必要だと思われなければ意味がない。

崇高な理念や信念があったとして、それをいかにソフトウェアに吹き込むかがソフトウェア企業のやるべきことだ。自分は Rails エンジニアとしてソフトウェア業界に橋頭堡を築いたので DHH のことは尊敬しているけど、 Basecamp には人々に求められる良いソフトウェアを作ることにフォーカスして欲しいし、自分もそういう姿勢でソフトウェア開発に携わっていきたい。