| @労働

COVID-19.jpg

Basecamp の Jason Fried が Amazon で REMOTE がバカ売れし始めたので返金を始めたそう。なぜ返金するのかというと、本が売れているのは多くの人がリモートワークを恐れており、そのような恐怖・不安に REMOTE という本が役立つから、とのこと。

アメリカはリモートワーク先進国なのかなと思っていたけど、やっぱり昔ながらの方法で仕事してた会社もあったんだろう。アメリカでもコロナウイルスが猛威を振るいつつあるいま、そのような会社もリモートワークをやるようになり、リモートワークの心構えが書いてある本がバカ売れしてるということですね。おもしろい。

HashiCorp の Mitchell Hashimoto さんのリモートワークについてのツイートもおもしろかった。これまでのリモートワーク経験で得られたことが書かれている。

全従業員をリモートワークに、という動きは良い傾向だと思うが、たくさんの不安・疑念・不信を引き起こす。多くの人が「はいはいこんなもんね」という感じで仕事をするだろうが、リモートワークは一筋縄ではいかない。多くの人が仕事に使う机を会社のものから自宅の自分のものに置き換えただけのことではないな、ということに気がつくだろう。

リモートワークは一部の人にとってはうまく機能しない。みんながリモートワークに適応できるわけではなく、それは仕方がないことだ。これまで HashiCorp ではたくさんの人が「仕事は楽しい、同僚も好きだ、ただやっぱり自分は顔をつきあわせたコミュニケーションの方がいい」という理由で会社を去って行った。これは自然なことだ。

このほかにも Hashimoto さんが新しく従業員を雇ったときに説明するリモートワークについての心構えが書かれていてうなずきながら読んだ。一番最初のやつから結構ショッキングだが事実だと思う。

「君は友だちができない」。残酷だが事実だ。リモートワークをするなら、仕事以外でとても仲の良い友だちがいないとダメだ。なぜなら仕事では友だちができないから。リモートワークでも同僚とは仲良くなれる。でもリモートワークの同僚とは遊びに行ったり、子ども同士が同じ学校になる、ということはない。

そのほかのツイートもおもしろいので読んでみて下さい。

2020-03-14 追記

Jason Fried が元の Tweet を消してしまっている。およそ 400 件の返金請求が来たみたい。自動化できておらず破滅状態なので返金は終了するとのこと。

| @労働

リモートワーク別に寂しくないし楽勝、みたいなコメント多いけど違和感あった。リモート楽勝という人はフリーランスとか受託の会社の人なのではないかと思う。自分のブックマークコメントは以下。

激しく同意。雑談したい、家族から家事を頼まれる、オフィスにいる連中から事業理解が低いと責められる、毎日服を着替える能力や通勤電車に乗る能力が失われる、などなど — http://b.hatena.ne.jp/morygonzalez/20180309#bookmark-359971190

「こいつはわかってない」問題

自分の場合は事業会社に所属した上でのリモートワークだった。事業会社(大抵のスタートアップもこれに含まれるはず)の場合はソフトウェアエンジニアにも事業やプロダクトへの理解が求められるので、リモートだとなかなか厳しい部分がある。事業理解は日々の MTG の他、オフィスで何気なく交わす雑談や昼飯の時なんかに醸成されるものだと思うので、リモートだと MTG での情報伝達密度が下がるし雑談や昼飯に至ってはそもそも不可能なので自分自身の事業理解も深まらない。仮にこちらに事業に対する理解があったとしても、それをオフィスにいる連中に伝えることが難しいので結局「こいつはわかってない」という烙印を押されることになる。リモートワークやってて同僚のエンジニアの皆さんとは友好関係を築けたと思うけど、 PM や上司とはなかなか良い関係になれなかった。

家庭内で仕事が軽んじられる

家族がいる人の場合は家族が「こいつ家にいてあんまり忙しくなさそうだから家事を頼もう」ということになりがち。自分の場合は子どもの幼稚園の送り迎え(バス乗り場まで)、幼稚園から帰ってきたあとの子守、洗濯物干し・取り込み、などを頼まれることが多かった。配偶者も仕事をしていて家事を分担する、ということなら当然やるけど、我が家の場合は嫁さんが習い事やヨガで忙しいので家事をやらなければならない、という感じで、自分の仕事は嫁さんの習い事よりも優先度が低いものなのだろうかと悶々とした。

社会適応能力の低下

毎日身支度をする能力、出かけていく能力も確実にむしばまれていく。転職してリモートワークからオフィスワークに切り替えて、朝の混んでる時間の電車に乗る通勤生活を再開してからの数ヶ月間は肉体的にも精神的にも非常につらかった。また家で仕事してると出歩かないので当然に運動不足になる。自分で意識してジョギングしたり体を動かしたりしないと確実に健康を損なう

自分がリモートワークに対して否定的な見解を持っているのは以上のような背景があるのであった。

良い面もある

もちろんリモートワークには良い面もある。

ワークライフバランス

子育てのための一時期や家族の看病が必要な時期には非常にありがたい制度だと思う。ワークライフバランスは非常に良好になる。

集中維持

コード書きに集中したいときにもリモートワークは便利だった。リリース前など、移動の時間も惜しんでコードを書きたいときには朝 10:00 から夜の 24:00 頃まで風呂とトイレと飯の時間以外はずっと仕事してたこともあった。それでも 10 時間は時間が空くので十分睡眠をとることはできる。これも前にブログで書いたような気がするが、いつでもオフィスに仕事しに行ける環境で、自分の裁量で週に数日リモートで仕事をするのが一番満足度の高い働き方になると思う。

地方都市に暮らしながらデラウェア法人で働ける

あとそもそも福岡では前職のような数十億円規模の資金を調達してがつんと成長しようとしているスタートアップの仕事にありつくことなんかは不可能なので、田舎に住んでいても都会のイケてる手法で仕事できてたのはリモートワークならではだったと言える(これも元記事に書いてある)。いまの職場でやってることは前職で身につけた1もの(スタートアップで働くエンジニアのディシプリン的なもの、あるいは技術顧問おじさんの素養)を土台にしているので、これは非常にありがたかった。

まとめ

ひとくちにリモートワークといってもいろいろな形態、状況があるので、↑の記事のブコメのように「リモートとか楽勝じゃね?」というコメントを読んでうかつにリモートワークを始めようとしている人がいたとしたらちょっと踏みとどまってもらいたいし、自分に向いているか、勤務先のビジネス領域・ビジネスモデルなども加味した上で決めてもらいたいと思う。

あとリモートワークだとコードレビューが甘くなりがちではないか、という問題もあるけどそれはまた別の話かもしれない。

References


  1. 当時は自分は全然成長してないと思ってた。こういうのを身につけたんだということはあとから気がついた