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 今日の日経の経済教室に、相続税と機会の平等について書いてあった。少子化を迎えるに辺り、これからはますます貧富の差が拡大するのだという(親の財産を一人の子どもが相続するため)。活力のある社会にするためには、機会の平等が確保されなければならず、その為には相続税制度の効率的な運用が必要なそうだ。

 遺産には四つの種類があるらしい。一つは老後の生活資金だったお金が、不慮の事故による死亡などで使われずに発生する遺産。二つ目は子どもに残すことを目的に蓄えられた遺産。三つ目に遺産を残すこと自体に喜びを見いだす人が残した遺産。最後に、子どもから介護をしてもらうために戦略的に残された遺産。相続税を課す場合、それぞれを場合分けして個々の事情に応じた課税を行うことが最適なんだという(例えば三つ目のタイプの遺産は消費行動とも考えられるので消費税に近い税を課すなど)。

 しかし相続税制度をいじることは難しいらしい。アメリカの例では、実際に相続税を課されるほどの資産を持っている人は人口の数%に過ぎないが、彼らは富裕であるが故に政治的影響力が大きく、また、代々事業を継承している中小企業経営者や農場経営者を煽動して味方に付け、相続税率の上昇を防いでいるのだという。既得権にしがみついているわけですよ。悲しいことに日本でも事情は似たり寄ったりらしい。

 他にも記事には、親から遺産を受け継ぐ人は働く意欲が低くなり、遺産制度があると労働供給量が少なくなることや、家族経営の企業はそれ以外の企業に比べてパフォーマンスが低いという実証分析の結果が記してあった。これらは、遺産相続が相次ぐと経済規模が縮小していくことを示している。

 経済学は遙か昔に習ったので内容はすっかり忘れてしまったのだが、厚生経済学の第二基本定理というやつがあって、効率性と公平性が両立できることを示していた。適切に資源が再分配されることで、パレート最適な状況に到達するというものである。要するに、競争は大事だが、機会の平等が保証されないままの競争は意味がないということである。

 ここポイントですよね。ミクロ経済学は決して市場原理主義なわけではないのだ。