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 昨日の日経「医の再設計」という連載記事によると、厚労省が発表した医療制度改革試案では医療費抑制の中長期策の目玉に、生活習慣病対策と入院日数短縮が掲げられていたそうだ。しかし実効性には不透明な部分も大きいとか。

 まず、生活習慣病対策として健診の強化が挙げられていた。それで平成25年度の医療費を2兆円規模で減額できる見込みとか。しかし健診を強化するには費用がかかる。その費用を捻出するのは健保などだから、結局は保険加入者の負担、要するに国民の負担が増えるわけである。これは自己負担率増と同じで需要サイドへの調整である。

 しかし医療費抑制に成功したフランスなどの例を参照する限りでは、患者の窓口負担を引き上げても医療費抑制には大した効果はなかったそうだ。

 それで議論の対象になるのが、供給サイドへの調整。日経の記事によれば、日本の人口1000人あたりのベッド数は先進国のなかでも突出したものなのだそうだ。さらには平均入院日数も主要国の2倍以上の40日間と非常に長い。医療費高騰を招くはずである。

 しかし俺が今年の一月に昭和大学病院に入院したときは、ベッドが空かなくて緊急に摘出手術をしなければならないというのに、十日間ほど入院を待たされた。腑に落ちない。記事を読み進めると、それが医療産業特有の事情によるものだということが分かった。

 通常の産業の場合、供給が過剰に行われたならばものの値段が下がるため、企業は供給量を減らそうとする。しかし医療産業は市場ではなく診療報酬で価格が決定されるため”Invisible Hand”が働かず、供給量が減らされることはない。病院は患者を入院させておけばさせておくほど儲かるので、人口あたりのベッド数が多いにもかかわらず入院日数が伸びるという仕組みである。歪んでいる。

 医療に市場メカニズムを持ち込むことには抵抗がある。金持ちしか診療を受けられなくなったりしたら不公平きわまりない。しかしいまの医療産業は需給を無視した価格設定が可能なため、上述のような非効率な現象が発生している。これはいくらなんでも是正しなければならないだろう。

 よくよく考えればお医者さんも強力な自民党の支持基盤である。農協や土建屋と一緒。支持基盤=圧力団体と言い換え可能だから、要するにお医者さんもぶら下がり運動が大好きなのである。

 医療費の高騰を抑制するためには、供給サイドへの働きかけが最重要だ。しかし医者の既得権を排除しなければならないから、一筋縄に一筋縄では行きそうにない。