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HealthFit.app

Apple の「フィットネス」アプリへの不満

Apple Watch の「ワークアウト」を起動して走ったり運動したりすると iPhone 側の「フィットネス」アプリに記録が残る。心拍数やペース、 1km ごとのスプリットペースなどはわかるのだが、月ごとのグラフなどを表示する機能はない。個別の記録か、月ごとの集計値を見ることしかできない1

iOS Fitness app iOS Fitness app workout detail
Apple 標準のフィットネスアプリのキャプチャ。アクティビティのログ一覧と総消費カロリーなどが表示されるが、一ヶ月間で何キロ走ったかなどの統計データ(グラフ)は見られない。詳細の見た目はかっちょよいが込み入ったことはわからない(自分で Numbers などに転記して計算しないといけない)

グラフや分析データを見るにはランニング系アプリを使うしかない

月ごとの集計値をグラフにして見るためには Strava などに記録をアップロードするしかないが、詳細な分析は Strava でも有料プラン( Strava Summit )に加入しないと確認できない。特定のサービスにロックインされるのは嫌だし、どこかにデータをアップロードしなくても統計データを確認する方法はないものだろうかと探してみたら、 HealthFit という iOS アプリが見つかった。

HealthFit

610 円で買い切り。 Strava Summit の一か月分の値段よりも安いのになかなかよい。月ごとの集計データを確認できるし、心拍数をゾーン毎にパイチャートにして、運動中の負荷の割合を確認できる。 Apple のフィットネスアプリのローソクグラフよりもはるかにわかりやすい。

詳細な活動データ

HealthFit app activity overview HealthFit app activity metrics HealthFit app Heart rate pie chart
HealthFit アプリのワークアウト詳細。かなり詳細なデータが見られる。負荷などを計算して表示してくれる。心拍数のパイチャートがお気に入り。

心拍数の分布はかなり参考になる情報で、同じペースで走っていて心拍数の最大値も平均値も同じくらいだけど、実は分布がかなり違うということがある。月一回くらい近所の山(叶岳・高地山・高祖山・鐘撞山周回)でタイムトライアルやってる。去年の冬にベストタイム出したときと先日走ったときで、心拍数の平均値は同じくらい( 152bpm と 159bpm )だが、分布が全然違う。好タイムを出したときはレッドゾーンの割合が少ない。

去年 先日
左が去年のデータで右が先日のデータ。去年走ったときはレッドゾーンの割合が 8% しかないが、先日走ったときは 31% もある。フィットネスアプリのローソクチャートを見るだけではこの違いはなかな気が付けない。

心拍数の分布状況から自分の運動能力を客観的に確認できて便利だ。

集計データと TSB モデル

集計データの方はこんな感じ。フィットネスアプリでは見ることができない月ごとの集計グラフや、前年同日比のランニングやウォーキングの距離、 TSB モデルなるものに基づくトレーニング状況が確認できる。

月ごとの統計 日ごとの累積値(前年同日比) トレーニング状況がわかるグラフ
左から月ごとの統計、日毎の累積値(前年同日比)、 TSB モデルに基づくトレーニング状況がわかるグラフ。

統計グラフはまさにこういうのが欲しかった。別に特別な機能じゃないので標準のフィットネスアプリでこのくらい表示出来て欲しい。

二つ目の累積値前年比較も便利だ。今年は去年に比べてサボっているつもりだったのだがむしろちゃんと走っているようだ。去年は秋から走る頻度が上がっているので去年に負けないように頑張らないといけない、ということもわかって便利。

三つ目の三色のグラフは最初は見方がわからなかったが、 TSB Model の解説ページに飛んで理解したところによると、水色の線が長期的なトレーニング負荷(体力)、赤色の線が短期的なトレーニング負荷(疲労)、緑色の線がトレーニングストレスバランス(パフォーマンス)を表しているようだ。

パフォーマンスがマイナスの状態だと能力を発揮できないので、レース前にはトレーニングを減らして緑の線が 0 より上に来るようにすべし、などと記載されていた。ほほー、と思った。マラソンやトレランの大会に出る人には参考になるデータだろう。登山のためにトレーニングしている人もアルプスの山に登る前には緑線が非負になるように調整すると体調万全で登れるだろう。

Strava の代替になるか?

Strava にある有料機能に、いつどのレベルの負荷でトレーニングすべきか、休むべきかをわかりやすく指南してくれる機能があるが、グラフを見て分析するのが苦にならない人なら TSB モデルのチャートを自分で見て代替できるだろう。

Strava の有料プランの目玉機能に、近所の同じコースを走る人たちとタイムを競える機能( Strava のセグメント、リーダーボード、ローカルレジェンドなど)がある2。自分と同じくらいのペースの人とのバーチャルな競争はモチベーションアップにつながりそうだが、一人で黙々と走りたい人には不要だろう。

Strava はなかなか面白い仕組みのアプリだと思うが、自分には Summit (有料版)の料金はいささか高すぎる(月 800 円 OR 年 6300 円、アメリカだと年 $59.99 )。アメリカ人からしたら年間 60 ドルは昼飯 2 〜 3 回分くらいなんだろうけど、福岡なら 6300 円あれば昼飯 7 〜 9 回分にはなる。結構な出費だ。

分析は自分でできて、他人との競争にも興味がなく、お金は節約したいという人に HealthFit はおすすめだと思う。

なお誤解のないように書いておくと HealthFit はアンチランニング SNS ・プラットフォーム的なアプリではなく、 Strava のほかいろんなラン系のサービスに記録を書き出すことができる。 SNS などで交流しつつ、分析は自分で行いたいという人にも向いている。

もし良かったら試してみて下さい。


  1. 「ヘルスケア」アプリの方にグラフを表示する機能はあるが、ウォーキングとランニングの距離がまとめて表示されてトレーニング文脈よりも健康文脈の方が強く、ランニングの目標管理には使いづらい。一日あたりの平均値が表示されるのもいまいち。 

  2. サイクリングの人たちはほかにルート作成の機能を重宝しているらしい。これは以前は無料で使えたがいまは Summit 限定でこの機能のために自転車乗りの人たちは Strava の有料プランを使っているみたいだ。