手短に批評すると、『いつか読書する日』は駄作だった。独身の中年女性が、坂の多い街を徒歩で牛乳配達するというシチュエーション(しかも主演は田中裕子!)に惹かれて期待して見に行ったのだが、見事裏切られた。宣伝はシリアスなのに映画は時折コミカルな場面を挟んだりしていて、監督の意図と反対に広告が作られてしまったのではないかと思った。見に来ていた人はいかにも冬のソナタが好きそうなおばさんばかりで、この人たちもきっと純愛物を伺わせる宣伝につられてやってきて見事に期待を裏切られたはずだ。
そもそもこの映画には構造的な欠陥があると思う。物語に必要とは思えない登場人物が出てきているし、本当は複数の独立したストーリーだったものを、監督が欲張ってくっつけてしまったのではないだろうか。恐らくこの映画は中年の恋と児童虐待と老人の痴呆の三つのテーマをごちゃまぜにしたものである。田中裕子が中年になっても昔の恋人のことを忘れられず独身を貫くという設定にはまり役だっただけに、非常に残念だった。
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