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フィラの景色

2015年6月15日

14 日夜 8 時に福岡を出発して羽田でカタール航空のアテネ行きに乗る。カタールで乗り換えてアテネに 15 日の昼に到着した。

アテネに着いてまずは現金を引き出そうと ATM に新生銀行の PLUS マーク付きカードを入れてみるが、引き出すことができない。 10 年前にヨーロッパを旅行したときは新生銀行のカードでドイツでもチェコでも、円預金を現地通貨で引き出すことができた。同じようにして現金を引き出そうと思い、 ATM にカードを入れるが、事前にインターネットバンキングかなにかで手続きを行っていないと、海外 ATM での引き出しができないようだった。そういえば一時期新生銀行のカードをスキミングして海外で不正に引き出すという犯罪が横行したので、何も設定してない場合は海外での引き出しができないようなルールに変わったのかも知れない。日本では羽田の三井住友銀行の両替所で €60 両替しただけだったのでユーロを現金でほとんど持っておらず、またギリシャの両替レートは日本で €1 = ¥141 だったものが €1 = ¥151 もして最悪のレートで、到着するや否や空港の到着ロビーで派手に夫婦げんかをした。

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Thira, Greece

結婚して新婚旅行に行ってなかったので、新婚旅行代わりに息子殿もつれて三人でギリシャとクロアチアに行ってきた。アテネまでの飛行機はカタール航空で、アテネからギリシャの島々への飛行機、フェリー、クロアチアへの飛行機、すべての宿泊は自分たちで手配した。いわゆるツアーではない旅行をしてきた。

航空券や宿の手配は結婚式の準備や住宅の建設と同じようにつらく、また旅行中は飛行機の欠航があり大変な思いをした。いまはみんな海外旅行は行ったことあると思うけど、家族で、しかも子連れで旅行に行くときには一人で行くときとは勝手が異なるということがわかったので、得られた知見をシェアさせていただきます。

1. 飛行機はホールチケットを買う

旅程に乗り継ぎが発生するような移動がある場合は、途中の遅延・欠航時のリスクを旅行者自身が負わないためにホールチケットにするのが良い。ギリシャのミコノス島からアテネを経由してクロアチアのドゥブロヴニクに移動する際、我々は個別にチケットを買っていたため、ミコノスからアテネへの便が欠航したときに発生した損害(アテネ => ドゥブロヴニクのチケットの予約変更費用)を自分たちで賄わなければならなかった。ミコノス => アテネ => ドゥブロヴニクを一つの航空会社を窓口にして買っておけば、遅延が発生したときの振り替えや代替輸送はチケットを購入した会社が責任をとって手配してくれる。

またドゥブロヴニクではボスニア=ヘルツェゴビナのモスタルという街への日帰りエクスカーションを予約していたが、飛行機の欠航により参加することができなかった。キャンセルを申請したが、キャンセル時の Refund がない代わりに安くなるタイプの予約を選んでいたため、返金してもらうことができなかった。数百円増しで事前キャンセルが可能になるタイプの支払いオプションもあったので、海外で日帰りツアーなどを日本から予約する場合にはそういうオプションを選んでおくのが正しいと思った。外国は日本ではないので何が起こるかわからない。リスクは極力負わない方がよい。

2. クレジットカードの付帯保険を過信せず海外旅行保険に入る

クレジットカードの付帯保険には飛行機遅延やロストバゲージの補償はついていない。学生旅行と違って子どもがいたりする家族での旅行では、飛行機に乗れなかったときに発生する被害額が大きくなりやすい(飛行機のチケットの変更手数料、宿のキャンセル料などなど)。ゴールドカードなど特殊な付帯保険があるカードを保持しているのではない限り、少々お金がかかっても海外旅行保険に入っておく方が良い。

3. 日本円を現地で両替しない

日本円をギリシャで両替しようとしたら恐ろしくレートが悪かった。羽田空港の国際線ターミナルには三井住友銀行の両替窓口があり、ここのレートは €1 = ¥141 だったが、ギリシャの両替レートは €1 = ¥151 と 10 円も悪かった。しかし最強なのはクレジットカードの海外キャッシングで、 JCB カードでキャッシングして ATM で降ろしたところ、 €1 = ¥139 で引き出すことができた。しかもこのレートは手数料込みである。キャッシングなので年率 18% の金利がかかってしまうので帰国後に迅速に返済する必要があるが、賢く使えば一番有利なレートでユーロが引き出せる。新生銀行の口座にある円預金も海外で現地通貨として引き出せてレートは悪くないはずなので活用してみるといいと思う。ただクロアチアに関しては円とクロアチアクーナの両替レートは決して悪くなかったので、渡航先によりけりかも知れない。少なくともギリシャの場合はキャッシングの方がはるかにレートが良かった。

4. tripadvisor でレビューを見て Booking.com で予約する

今回旅行をするまで知らなかったのだけど、 tripadvisor というサイトが旅行者向けの情報をたくさん提供していて、旅行者向けの食べログ的な地位を確立しつつある。このサイトで宿やレストランのレビューを読むことができる。また Booking.com という YAPC 2014 のスポンサーにもなってたりするサイトで宿を予約するのが良い。宿泊予定の宿について、地図が添付されたメールが送られてきて便利。実際に宿泊した人のレビューが読めるのもサイコーだ。

5. なるべく連泊する

ギリシャのサントリーニ島は宿泊費が高くて同じところに連泊できなかったため、一日一日宿を転々とした。しかしこうすると昼間の時間を宿で過ごすことができず、毎日チェックアウトしては次の宿にチェックインしての繰り返しになり、旅行というより移動になってしまう。少々コストがかかったり場所が悪かったとしてもなるべく同じ宿に連泊して街の散策を楽しむ方に力を注いだ方がよい。

6. 洗濯屋を利用する

日本人の感覚だと他人に洗濯を頼むということに抵抗があるかもしれない。しかし外国にはセルフサービスのコインランドリーは少ない。かといって手洗いで毎日洗濯をしていると寝るのが遅くなったりして観光する時間が削られてしまう。洗濯は洗って干して乾かして畳んでという作業にかなり時間をとられる。自分は今回の旅行でセルフサービスのコインランドリーが見つからず、仕方なく洗濯屋を利用してみたのだが、非常に快適だった。洗濯物の量に関係なく値段は €10 ほどで、きれいに洗って畳んでもらって 3 時間で仕上がった。洗濯してもらっている間は自分の身は自由なのでその時間を観光にあてることができ、非常に有意義だった。

7. 子どもを連れて行く

子どもを実家に預けて夫婦二人で海外旅行に行く、という選択肢もあったかもしれない。しかし二週間ほど外国に連れて行っただけでも息子殿はハローとかバーイとか言うようになったし、 "What's your name?" と聞かれて名前を答えるようになった。また子どもをきっかけに他の家族連れや現地の人と話すきっかけができたりす。ベビーカー(ベビーカーは和製英語なので stroller と言わないと通じない)を持って行ったりとか大変な部分はあるが、連れて行って良かったと思う。

8. 水を飲み炎天下を避ける

夏のヨーロッパには初めて行ったが、地中海沿岸地域の夏は湿度が低くて過ごしやすいに違いないと思っていた。確かに湿度は低く日陰は涼しくて過ごしやすいが、強烈な太陽と乾燥で、モンスーン気候に適応した日本人には非常につらかった。夏なのに唇がひび割れてリップクリームが欲しいと感じるのは初めてのことだった。意識して水を飲まないと確実に脱水症状を起こす。またギリシャの太陽は強烈で日も長いため、正午から午後 4 時くらいまでは飲食店に入るか宿で休むなどして炎天下に身を置き続けないようにしないと危ない。恐らくイタリアや南フランス、スペイン、ポルトガル、北アフリカも同じような気候だと思う。帽子やサングラス、日焼け止めも忘れずに。

9. 中学英語を復習する

英文でメールを書いたり英文を読んだり英語で人が話しているのを聞いたりするのはだいたいできるのではないかと思う。しかし話すのが難しかった。腹減った、ビール飲みたい、トイレ行きたい、これ買いたい、荷物預かっててちょんまげ、お釣りちょろまかしてんじゃねーぞこのタコ、飛行機欠航とかふざけんな金返せコノヤロー、みたいな英語は、英文のニュースを読んだりしてるだけでは話せるようにはならない。中学校の英語の授業で習うような英会話文が一番実用度が高い。英語の読み書きには自信がある人でも、旅行前は旅の英会話とかをさらっと学習してフレーズごと覚えといた方がいいと思った。

10. SIM Free の WiFi ルーターがあると便利

スマートフォンになれきった現代人は、日本にいるときと同じようにインターネットにアクセスできなかったら死んでしまうと思う。しかし日本以外の国でインターネットを使うとローミング料金が高額で帰国後にまいっちんぐになってしまう。いまは海外でもパケ放題になるようになったが、それでも一日 2980 円もして、一週間の旅行でも 20000 円オーバーになる。海外向けのレンタル WiFi ルーターもあるにはあるが、一日 880 円程度費用がかかったり、一部の国には対応していなかったりする。

日本以外の国はプリペイドの SIM カードを比較的安価に買うことができ、 SIM フリーの WiFi ルーターにそいつを挿して使うと現地で日本にいるときと同じようにツイッターやホェースブックが使えて便利。道に迷ったときにも Google Maps でさくっと検索できる。ただヨーロッパの観光地の飲食店には必ず無料の WiFi があるので、インターネット使うときには店に入ればよいと割り切れる人には必要ないかも知れない。自分は解約済みの EMOBILE の Pocket WiFi GP02 を所持していて、この端末は海外の SIM カードに対しては SIM ロックがかかっていなかったので、現地で購入したプリペイド SIM カードを挿入して使ってみた。非常に便利だった。

ただ iCloud のフォトストリーム同期を on にしていると、日本国内では 4G 回線や 3G 回線では同期を行わないフォトストリーム機能が、 iPhone からは WiFi ルーターも固定回線の WiFi も区別できないので同期を行ってしまい、データ通信があっという間に上限に到達してしまうので注意が必要。 旅行中はフォトストリーム同期は Off にしておくことが望ましい

なお WiFi ルーターは電池の消耗が激しいので Anker のモバイルバッテリーとチャージャーがあると高速に充電できて快適。


旅行して帰ってきた日の新聞にはギリシャデフォルト間近とか ATM で預金を引き下ろすために並ぶ人多数とか書いてあったけど、自分が現地にいたときには特に混乱もなく、ぎりぎりのタイミングで無事旅行できたのかなと思う。いまの時期にギリシャに行きたいと思う人は少数派かもしれないですけど、何かの参考になれば幸いです。個人的にはクロアチア最高でした。旅行記を別の記事として書きます。

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『悲しきアンコール・ワット』という本を読んだ。

アンコールワットは東南アジアを代表する遺跡だ。僕も去年10月にカンボジアを訪れて圧倒された。石で作られた遺跡の数々のクオリティはとんでもなく高い。是非とも一生に一度は訪れる価値のある場所だと思う。

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盗掘

カンボジア政府によると、カンボジアにはアンコールワットの他にも仏教やヒンズー教の遺跡が1000ヶ所以上あり、文化財がたくさん残っている。しかし植民地支配や内戦など不幸な歴史が折り重なり合い、盗掘が相次いできたらしい。

古くはタイのアユタヤ朝との戦いに敗れてアンコールワットの美術品が戦利品として持ち去られたし、フランスの植民地支配時代にはアンコールの仏像の美しさに魅せられた不心得なフランス人達が遺跡から仏像を切り取ってフランスに持ち帰るなどした。

第二次大戦後に独立を果たしたものの、貧しさのために盗掘はエスカレートし、内戦期やポル・ポト派が国を支配した時代には公然と文化財がタイへ持ち出され、世界中に密輸された。

1993年にポル・ポト派とフン・セン派で停戦合意し、その後はカンボジアに平和が訪れ、遺跡の盗掘も止むかと思われたが、事態はそう単純ではないようだ。というのも現政権の政府軍は、断続的にポル・ポト派を吸収するかたちで成立しており、軍の要職をポル・ポト派の元幹部が担っているらしい。従って地方によっては政権の力が及ばず、賄賂を握らされた軍人達が盗掘を黙認しているケースもあるそうだ。

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模造品

知らなかったのだけど、あんまりにも盗掘が多いものだから、カンボジアの遺跡仏像はこっそり模造品とすり替えられているものもあるそうだ。だから僕がアンコールワットなんかで見たもののうちの何割かは模造品だったのかも知れない。

また盗掘のみならず、模造品を本物として輸出する偽物ビジネスも横行しているのだそうだ。模造品製作の技術は遺跡の修復のためにも是非とも伝承していく必要のある技術であり、技術を得た職人達が偽物製作に手を染めたりせず、遺跡の修復だけで食べていけるようになるのが望ましい姿だと思う。

いまでも盗掘に手を染めるカンボジア人には、長期的に考えれば、先祖が残した遺跡を守ることが子や孫達の幸福に繋がることに気付いて欲しい。盗掘で荒らされた遺跡ばかりでは、外国人観光客もやってこなくなる。

そして密輸された遺跡を買ってるヨーロッパやアメリカや日本やシンガポールやタイの金持ち達に言いたい。アンコール遺跡の仏像はあの照りつける太陽の下、あるいは日が沈んだ静かなアンコールワットで見るから素晴らしいのであって、自宅に飾るもんじゃない。金にものを言わせてよその国の国宝級の美術品を自分の手元に置くなんて下品極まりない。

仮に遺跡に設置してある仏像が模造品であったとして、カンボジアの遺跡はカンボジアの太陽の下で、土埃の中で、においの中で見るのが一番だ。少なくとも自分は、夜の闇の中に照らし出されるアンコールワットの彫刻を見て、昔のクメール人達がどんなことを考えていたかが分かったような気がした。

蛇足

カンボジアの話とは直接関係ないのだが、ベトナムについての話が面白かった。カンボジア人はベトナムに対して複雑な感情を持っているらしい。歴史的に大国のベトナムに領土を圧迫されてきた経緯があるし、仏領インドシナだったときには、フランス人は自分たちの下にベトナム人を置き、ベトナム人にカンボジアを統治させたそうだ。

ベトナム戦争終了後に、ポル・ポト率いるカンボジアと統一したベトナムは戦火を交えることになるのだが、ベトナム統一後に取材でホーチミンを訪れた著者(著者の本職はカメラマン)は、ホーチミンと名前を変えられたはずの都市が旧称のサイゴンのまま呼ばれていることを知り驚いたらしい。統一したといっても南ベトナムは南ベトナムであり、住んでいた人達が入れ替わるわけではない。カンボジアに派兵されたベトナム軍は元南ベトナム出身者で構成されていたようで、歴戦のベテランではなく、5万人が亡くなった。ホーチミン市内では物乞いをする手足を失った傷病兵の姿を見かけることがあるが、旧北ベトナムのハノイではそのような姿を見かけることはないのだそうだ。北ベトナムが南ベトナムを支配していた、という構図がかいま見える。

さらに蛇足

この本は2004年の本だが、シェムリアップはかつてのネパールのカトマンズのようにバックパッカーの聖地になっており、アンコールワットの遺跡に登って朝日を眺めながらマリファナを吸うのが彼らにとって最高らしいみたいな記述があった。少なくとも半年前に自分が訪れたシェムリアップは割と安全な観光地で、朝からアンコールワットに登ってマリファナ吸ってたりしたら怒られるんじゃないかな? 欧米人のバックパッカーも多いけど、年寄りの欧米人旅行者の姿も結構目に付いた。そういうわけでちょっと情報が古いというか、現状とは認識が異なっていると思う。いまのカンボジア、少なくともシェムリアップは安全に観光が出来る良いところだと思う。