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あの日、欲望の大地で

評価 : ★★★★☆

アメリカとメキシコの国境付近のトレーラーハウスで逢瀬を重ねる中年カップル。しかし情事の最中に小屋が爆発炎上し、二人は死ぬ。実は二人は不倫カップルで、お互いに家庭があった。男の息子と女の娘、惹かれ合ってはいけない二人が惹かれ合い、父母と同じ道をたどることに。そこから果てしない悲しみのストーリーが始まる。

予告編は昼のソープドラマっぽい感じで、そういう内容の映画なのかなーと思って見に行ったんだけど(劇場には予告編につられたのか、韓国ドラマとか好きそうなおばさんがいっぱいいた)、実際はなかなかどうして面白かったです。見ごたえのある映画でした。

一応男女の愛をテーマにした映画なんだけど、ただの恋愛映画ではない。この映画は女心についての映画だと思った。空中キャンプの人がこの映画を見たあとの感想で書いてたのがどんぴしゃ言い当ててる。

いったい女性は、どのようなときに、満たされなさを感じるのだろう。たとえば、男にとっての満たされなさが、「のどが渇いているのに、水を飲めない」という状態だとすると、女性の満たされなさとは、「いくら水を飲んでも、のどの渇きは満たされないし、水を飲めば飲むほど、さらにのどが渇いていくような気がする」といった状態なのだと、この映画を見ておもった。周囲はきっと、「そんなに水ばかり飲んでいて、どこが渇いているのだ」とふしぎにおもうだろう。しかし、女性にとって、つねにのどは渇いていて、潤いを欲しているし、ときに水を飲むことは苦痛ですらあるのだが、それでも、水を飲むことを止められない。

[映画]『あの日、欲望の大地で』を見たゼ! - 空中キャンプ

確かにこの映画に出てくるシルヴィアのような女の人はときどき存在する。事態が改善しないとは分かってはいるけど、次々別の男と寝るのをやめられないみたいな。

それにしても脚本が凝っていて、僕は最後の最後まで物語の仕掛けに気づかなかった。実はストーリーは二つの時代にまたがっていたのだ! とても良くできた脚本だと思う。

ラストはハッピーエンドっぽい終わり方なんだけど、鑑賞後の気分は決してすっきりしない。人間の業みたいなものについて考え込んでしまう。その点で言ったら そして、私たちは愛に帰る にテーマが近いんじゃないかと思った。愛とか、人間が生きることの悲しみについての映画だ。