サイドウェイズ
評価 : ☆☆☆☆☆
アレクサンダー・ペイン監督のアカデミー賞脚色賞受賞のアメリカ映画を日本人俳優でリメイクしたもの。監督は日本育ちのアメリカ人で、プロデューサーに踊る大捜査線の人が入ってる。オリジナルは大好きなのでときどきDVDで見返してるんだけど、結論から書くとこのリメイクは全然だめ。
オリジナルの『サイドウェイ』ではとにかく主人公のマイルス(ポール・ジアマッティ)がダメ男として登場するんだけど、リメイク版のサイドウェイズの主人公である斉藤道雄(小日向文夫)は全然ダメ男じゃない。いやダメなのかしんないけどダメさが足りない。
たとえばマイルスは、親友ジャックとの旅行に出かける日に寝坊して遅刻したり、うんこしながら本読んだり、売店でNYT買うついでにエロ本買ったり、母親の家に寄ってへそくりをがめたり、好きな女の子に誘われても逃げたり、離婚した後も前妻のことが好きで好きでたまらなくて、いつかはよりを戻したいって思ってて酒にべろんべろんに酔って前妻に未練がましく電話したり(このシーンのダメダメさにはダメ男としてシンパシーを感じざるを得ない!)、とにかくダメ男なのだ。しかしリメイク版の斉藤道雄はあんまりダメじゃない。真面目だし。オリジナル版ではマイルスがワインの博覧強記ぶりを女の子と競い合う場面がかなり重要な意味を持つんだけど、この映画ではそれも控えめ。ちょっとうんちくを披露するだけに終わる。
オリジナル版のジャックに相当する上原大介役を演じたのは生瀬勝久。この人はオリジナル版のジャックの軽薄さが出てて悪くはなかったけど、生々しいセックスシーンとかが省かれてるので、ジャックの情けなさに比べると弱かった。
マイルスは極限までに臆病で、ジャックは底抜けに女好きで軽薄なのがペイン版『サイドウェイ』の良かったところなんだけど、その対比が弱いので映画としての魅力が薄まってる印象。
オリジナルのサイドウェイが好きな人は、この映画見た後、納得いかなくなってきっとオリジナル版のDVDを引っ張り出して見ることになると思います。僕も今夜あたりオリジナル版を見直そう。