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 久々にDVDをレンタルして見た。劇場公開を見逃していた作品で、『16歳の合衆国』というもの。すごく良かった。なぜ映画館で見なかったのだろうかと後悔している。単純明快のハッピーエンドを求める人が見てもつまらないと思うかも知れないけれど、僕はこの映画を評価する。障害を持つ恋人の弟を殺してしまうリーランド青年の話はもの凄く重いテーマを含んでいる。現代社会の抱える病理が集約されている。もっと大々的に扱われても良い映画だと思うが、TSUTAYAにこのタイトルのDVDは一枚しかなかった。

 この映画の良いところは、安易に問題の原因を特定の何かにこじつけないところだ。主人公リーランドの恋人ベッキーはドラッグ依存、父親は有名な作家だが母親とは別居しており家庭は崩壊状態等々、リーランド青年は多数の問題に取り囲まれている。そのどれかが犯行の原因なのではないかと探るマスコミや世間に対し、リーランドは冷めた対応をする。

 リーランドが殺したベッキーの弟は知的障害を持っていたのだが、障害者のことをメインテーマとしなかったことも良かったと思う。障害を持つ人を物語に登場させると、映画の軸がどうしてもそちらの方に向きがちである。しかしこの映画はそうならなかった。バランス感覚が素晴らしい。

 ただ、最後の方がバタバタしてしまってやっつけ仕事的な印象を受けた。「実はこうだったのだ!」的な制作陣の独りよがり的な展開が観客を置いてけぼりにする。上映時間も短い。重いテーマを扱っているのだから、もう少し後半部分を丁寧につくって欲しかった。でもいい作品であることに変わりはないと思う。

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 Denkikanで『ロッテ・ライニガーの世界』を見た(ロッテライニガーの世界オフィシャルサイト)。ロッテ・ライニガーはドイツ人で、戦前に影絵のアニメーション映画を作った人らしい。珍しい映画であるし、この機会を逃したら一生目にすることができないかも知れないと思い劇場まで足を運んだが、1,000円と二時間の時間を費やして見る価値があったかどうかは微妙である。セリフなしの音楽と影絵だけの映画はやはり退屈だった。これに価値を見いだせる人はよほどの映画好きか、芸術家くらいではないだろうか。アート系の女の子とか、むかしを懐かしむ老婦人とかが見に来ていた。教養のない僕にはこの映画の良さが分からなかった。

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 アカデミー賞監督賞受賞作である。数々の映画賞で賞に輝き、作品賞の本命候補だと言われていたが、結局は『クラッシュ』にかっさらわれてしまった。同性愛がテーマの映画は、やはりアメリカでは不遇な扱いを受けるのだろうか。

 肝心の映画の内容自体はわりと良かった。これは同性愛を描いた映画というよりも、許されざる恋を描いた純粋な恋愛映画として考えるべきだろう。たまたま愛し合った二人が同性で、住んでいる国がアメリカだったということだ。

 大まかなあらすじ。職にあぶれていたカウボーイのジャック・ツイストとイニス・デルマーは、羊飼いのアルバイトを一緒にこなすことになった。二人は羊を連れてブロークバック・マウンテンに登り、二人きりで一夏を過ごす。ブロークバック・マウンテンは夏でも凍えるような寒さで、ある夜テントの下で身を寄せ合って寝ていた二人は体を重ねてしまう。下山した二人はそれぞれ家庭を設け父として夫としての役割を果たしていくのだが、お互いのことを忘れることができず、四年後にジャックがイニスを訪れ、燃えるような恋が再開される。いったいどんな結末が二人を待ち受けるのか。

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 正直あまり期待していなかったが、良い映画だった。これは読者の方にも是非見てもらいたい。

 ルワンダには大まかに分けてツチ族とフツ族という二つの民族がいた。ツチ族は侵略してきたベルギー人に取り立てられ、国を統治した。これがためにフツ族の不満が高まる。ベルギーから独立してしばらくした頃、クーデターが起き、人口で圧倒的多数を占めるフツ族が実権を握るが、その後も政情不安定な状態が続き、1994年、フツ族の大統領が暗殺されたことをきっかけにフツ族の民兵が蜂起し、ツチ族に対するジェノサイド(大量虐殺)が始まる。その当時外資系の高給ホテルに勤めていたフツ族のポール・ルセサバギナは、白人の上司や宿泊客が国外に脱出していくなかでホテルを切り盛りし、ツチ族の難民をホテルにかくまう。実話を元にした映画である。

 ホテル・ルワンダは当初日本で公開予定がなく、熱心な人々の署名活動によって漸く公開にこぎ着けた映画である(『ホテル・ルワンダ』日本公開を応援する会)。この経緯自体が、ルワンダが置かれていた状況を表している。ルワンダではわずか100日間の間に100万人以上の人々が殺されたといわれているのに、国際社会は救いの手を差し伸べはしなかった。欧米の先進国家は、ルワンダに滞在する自国民を救出するとさっさと軍隊を引き上げてしまう。国連軍も「我々はピース・キーパー(平和維持部隊)でありピース・メーカーではない」として、虐殺を止めようとはしない。結局のところ白人どもは、平生「人権人権」と叫んでおきながら、白人が住んでいるところか、油が湧き出るところにしか関心を示さないのである。ただのアフリカ人、ただのアジア人が圧政に苦しみ人権を弾圧されていても、知ったことではないのだ。ルワンダでツチ族とフツ族がいがみ合うようになったは、白人たちの統治政策のせいであるというのに。

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 ナチスに抵抗運動を行った学生たちの話。ナチスはひどいなぁ、全体主義は嫌だなぁ、という思いを新たにした。しかし如何せん、暗すぎる。物語に救いがない。暗黒の世界の出来事が最初から最後まで続く。疲れる。

 白バラという抵抗グループの学生たちがヒトラーを批判するビラをばらまく。メンバーのゾフィー・ショルとハンス・ショルの兄妹は、自分たちが所属する大学でビラをまき運悪く捕まってしまった。ゲシュタポに尋問を受け、協力者のことを白状すれば命は助けてやると交渉を持ちかけられるが、これを拒否する。結果、彼らはギロチンにかけられ処刑されてしまう。

 最初から最後まで、ほとんどの出来事が建物の中で完結することが映画に閉塞感が漂わせている。当時の雰囲気を残す街並みが少ないからこれは仕方ないだろう。とにかく息が詰まる。加えて裁判の場面で、一緒にとらえられたメンバーのひとりが「秘密を何でも喋る、だから自分だけでも助けてくれ」と仲間を裏切るようなことを口にする。まるで救いがない。

 ナチスがつけていた記録を元に史実に忠実に作られた映画らしいが、もう少し他に表現方法がなかったのかと思う。大事なことを扱った崇高な映画だとは思うが、映画や物語には喜びというか、救いのようなものが必要だろう。ドキュメンタリー向けのテーマだと思う。

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 大杉漣主演の『ライフ・オン・ザ・ロングボード』を見た。端的に感想を述べるなら、まれに見る駄作である。よって★ゼロ。見る価値なしである。見ようかなと計画していた人は見ない方がよい。時間と金の無駄である。

 もともとあまり邦画は見ない方なのだが、去年『運命じゃない人』を見て以来、邦画にも面白いものがあるからうっかりしてると見逃しちゃうな、と心を入れ替えた。この映画は予告編も面白そうだったしね。さらにDenkikanのフィルターを通してある。Denkikanは社長がすべて試写を見て面白いと思ったものしか上映しないそうだから、駄作に当たることは希である。ところが、この『ライフ・オン・ザ・ロングボード』は見事に期待を裏切ってくれた。

 食品メーカーに勤める主人公は55歳で定年を迎え、若い頃にかじったことがあるサーフィンをやろうと思い立って種子島に向かう。そこで若者や現地の人々と触れ合いながら人生について、家族について見つめ直すという、マンガのような内容の映画である。ぶっちゃけ、この数行の文章を読んだだけでもう十分。あなたは映画館に足を運ぶ必要はない。

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 一月前に見たのだけど、感想を書くのがだいぶ遅くなってしまった。

 コロンビアの花工場で働くマリア。大して好きでもない恋人との間に子供ができ、仕事はクビになり、家に帰れば母、離婚して子連れで家に帰ってきた姉から愚痴ばかり言われる。コロンビアでの生活に嫌気がさしたマリアは、麻薬の運び屋の仕事を持ちかけられ、それを引き受けることを決意する。

 悪くはなかったが、特筆するほどの内容でもなかった。南米映画だが、途中から舞台がニューヨークに変わるので、南米の風景が放つのんびり感もあまり味わうことができなかった。

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