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 阿蘇を舞台にした映画、『風のダドゥ』を鑑賞。これがまれに見る駄作。☆は中身がないですからね。五つ星じゃないですよ、ゼロですよ。すなわち『ライフ・オン・ザ・ロングボード』と同じで見るに値しないということですね。

 高校生の主人公歩美は生活のなかに自分の居場所を見つけられず、亡き父との思いでの地阿蘇を訪ね自殺を図る。草原に倒れていたところを牧場の人間に助けられ、阿蘇で馬と触れ合ううちに生きること、命についてを見つめ直す。

 見ていて、どうしてこんなにつまらないストーリーに資金がついて映画化されるのか分からなかった。金持ちの息子が道楽で撮ったんじゃないかというような映画だった。ストーリーはブツギレ、少女がなぜリストカットするのかの説明も不十分。リストカット、馬、阿蘇、父親、それらのうちの少なくとも二つくらいにテーマを絞るべきで、綺麗な景色、動物との触れ合い、トラブルを抱える少女、子どもとどう接して良いか分からない大人たち、とりあえずすべてを登場させておくかという、安易な発想に基づく作品だと思われる。

 頼みの綱の阿蘇の景色も、カメラマンが下手くそなせいか死んでいる。鑑賞中、これまでに感じたことのない違和感を覚えたのだけど、上映開始後20分辺りでその原因が分かった。カメラワークが良くないのである。意味不明な主人公の女の子のアップがつづいたり、かならず主人公の女の子を画面の中心に据えたりと、一昔前のアニメのようなのだ。僕はカメラのことなんて全然分からない素人だけど、その素人にもおかしいと思えるようなシーンが多かった。ストーリーのみならず映像も酷いのである。

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 DVDで鑑賞。冴えない暮らしをしている若者四人の話。主人公エディはこそ泥や盗品商、コックなどちんけな商売をしている友人らから金を募り、カードゲームに挑む。が、いかさまによって悪党ハリーに対し10万ポンドの借金を背負う。ハリーは一週間以内に返さなければ各々の指を一本ずつ切断し、エディの父親が営むバーまで貰うという。一週間で大金を作らなければならない。そんななかエディは偶然、隣の部屋に住む連中の会話を壁越しに耳にする・・・。

 全般的に痛そうな映画だった。「怖おかしい」がキーワードだと思う。殺し屋、ギャンブラー、麻薬の売人などなど、怖いアウトローが出てくるんだけど、破滅的な生活を送っている彼らは自爆してしまう、みたいな。監督のガイ・リッチーは「タランティーノに影響を受けている」なんてネットではよく批評されているけど、トレインスポッティングにとても近いと思った。また脚本が素晴らしいという声も聞かれるけど、僕はストーリー展開よりも雰囲気が気に入った。いまどきマフィアの役を黒人にやらせているのも、イギリス人風の皮肉なんだろう。

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 ジョージ・クルーニーの監督作。冷戦時代のアメリカでのアカ狩りをテーマとした映画。マッカーシーという議員がアカ狩りを提唱し、真偽も定かでない人々が社会的に抹殺されていく。共産主義の粛正にも似た異様な状況に、キャスターのエド・マローらは疑問を呈し、番組で訴えかける。冷戦構造のまっただ中で、少しでも共産主義に利するようなことをすれば世間から批判される状況での勇気ある行動を描いた、実話を元にした作品。

 普通に面白かった。しかし違和感が残る。それはやはり僕が物心ついた頃には冷戦が終わっており、しかも冷戦の最前線ではなかった日本という国に住んでいるからであろう。これはもっぱらアメリカ国民とヨーロッパ人を対象とした映画であり、その他の地域の人が見ても面白くないのではないかと思う。

 映画としては良くできていると思う。白黒画面が役者とスクリーンにマッチしているし、登場人物たちがバカボコと煙草を吸い、50年代にタイムスリップしたような気分になれる。ほかの時代劇と同じように、室内でのシーンが主なのだが、不思議と閉鎖感のようなものを感じない。恐らくテレビがテーマだからだろう。テレビ番組はいつの時代でもスタジオの中で作られるから、室内だらけのシーンでも不自然さを感じないのだと思う。

 もちろんマスメディア論も語られている。スポンサー、政府、軍から圧力がかかるのだが、それに屈することなくマローらは番組を作っていく。メディアがきちんと機能しないと民主主義は守られないのだ。日本の大手マスコミの方々は是非この映画を見て勉強して欲しいものですねぇ。

映画公式サイト:Good Night, And Good Luck.

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 DVDで鑑賞。良かった。南米ロードムービーだけど意味不明なセックスシーンもないし、安心してみられる。もちろんガエル・ガルシア・ベルナルが超格好いい。

 この映画の主人公は若き日のチェ・ゲバラだ。医学生のエルネスト・ゲバラは、30歳になる前に南米をバイクで回る旅行に出かけたいという友人アルベルトとともに、大学を休学しての長い旅に出かける。旅先で生活に困窮する先住民やなかなか職にありつけない共産主義者の話を聞いたり、マチュ・ピチュ遺跡を訪れてインカの人々に対する敬意を抱いたり、旅のクライマックスのハンセン病療養所で患者に一人の人間として接するなかで、エルネストの中に何かが芽生える。

 『天国の口、終わりの楽園』、『アモーレス・ペロス』、『アマロ神父の罪』という順番でガエル・ガルシア・ベルナルの出演作を見たけど、『天国の口・・・』と『アモーレス・ペロス』ではハチャメチャな悪ガキを、『アマロ神父の罪』で性欲に溺れながらも正義を貫こうとする若者を演じ、本作では見事心優しく知性溢れ、なおかつ正直な好青年を演じている。すごい出世だ(笑) しかし役柄が変わったからといって違和感があるわけではなく、喘息持ちの真面目な好青年の役もきちんとこなしている。『天国の口・・・』で演じたフリオは、酒と煙草をガンガンやって、あとはセックスのことしか頭になかったのにな。

 ロードムービーはたいてだらだらしてるから嫌いなんだけど、これは退屈させない。南米の景色がとても美しいから、下手なNHKの地球自然番組を見ているよりも全然美しいものを目にすることが出来る。加えてガエル・ガルシア・ベルナルである。つまらないはずがない。過激な性描写はなく、意外にも平和な映画である。

 チェ・ゲバラが共産主義者として目覚めるきっかけを与えられるところで映画は終わるのだが、理念としての共産主義はとても爽やかで清らかだから、見終わった後は爽やかな気分になれる。こういう映画は良いと思う。金曜ロードショーとかでも上映してほしい。誰かから嫌な目にあわされたときに見ると良いかもしれない。

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 ドイツ降伏前夜、ヒトラーが自殺するまでの日々と、ヒトラーに仕えていた人々が終戦を迎えるまでの話。ヒトラー研究家とヒトラーの秘書だったトラウデル・ユンゲの著作を元にして作られており、劇中でのヒトラーの台詞は記録に残っているものなのだそうだ。ラストの部分ではちょっと納得いかない部分があったが、これだけ迫力がありリアリティーのある戦争映画を撮れるドイツは、同じ敗戦国として凄いと思う。

 同じように戦時期のドイツを扱った『白バラの祈り − ゾフィー・ショル、最後の日々』では室内でのシーンが多く、それが息を詰まらせる。しかし今作は、ヒトラーらはずっと地下壕に隠れており、ともすれば地下室のシーンだけになりがちなのを、爆撃される市街地のシーンも頻繁に登場させ、時代考証、舞台設定も抜かりない。あの破壊され尽くしたベルリンの映像はCGではないように見えたが、どうやって撮影したんだろう? 建物を復刻して巨大なセットを作ったのだとしたら凄い。

 野戦病院の悲惨さを描くことも忘れていない。傷ついた兵士たちの手足を豚肉のように切り落とす医者。最期まで優雅な日々を送るヒトラーや将軍たちと、手足を切り落とされる兵士たちの対比が非常にグロテスクだった。

 この映画はとにかく戦争の悲惨さを伝えてくれる。空襲され包囲されることの恐怖、傷ついた兵士たち、理不尽な暴力、死を目前にしての狂気。スパイ狩りで無実の市民が自警団に殺されたりする。『はだしのゲン』に近いものをこの映画からは感じた。またベルリンがソ連軍によって攻撃される状況は、沖縄戦の状況に近かったのではないだろうか。逃げようにも米英軍とソ連軍に包囲されていて逃げ場がなかった。

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 『ナイロビの蜂』はあらゆる映画館で散々予告編を見せられた映画である。期待に違わず面白い映画であった。★は四つだが、これは五つ星に近い四つ星である。

 公式サイトには「世界が涙した壮大なラブストーリー」とあるが、これは恋愛に加えてアフリカ問題、資本主義と大英帝国の悪しき部分をさらすことに重きを置いた社会派の映画である。

 外交官の主人公ジャスティン・クエイルは、上司の代理で勤めた講演でテッサという魅力的な女性と知り合う。二人が知り合ってほどなく、クエイルにケニアへの駐在命令が下るのだが、テッサは「私もアフリカに連れてって」と告白し、二人は結婚する。知り合ったばかりなのにクエイルに結婚を申し込んだテッサの目的は何なのか? アメリカに追従するだけの英国政府の姿勢を自己弁護するかのようなジャスティンの講演に苛立ちテッサは声を荒げ糾弾した。彼女はチェ・ゲバラを尊敬する“革命派”なのである。映画の冒頭、アフリカで彼女は謎の死を遂げる。なぜ彼女は死ななければならなかったのか。クエイルの悲しい踏査が始まる。

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 超話題作である。普通に面白かった。しかし、納得いかない点もある。Sankei Webカンヌ国際映画祭の報道関係者向けの試写会では最大のヤマ場で失笑が漏れたとされるとあるが、恐らく僕も同じ場面でおかしいんじゃないかと思った。ちょっと高校で世界史を勉強したことがある人なら必ずおかしいと思うはずだ。

 このことに対して僕が文句を言うと、一緒に見に行ったファンの人は「本ではちゃんとなってるから良いの!」と強く反論するのだけど、そういうもんだろうか。公開されて間もない話題作なので具体的な箇所を指摘するのはあえて避けるが、原作本が緻密に練られたストーリーであろうとも、映画化した以上、映画は映画として矛盾のないものでなければならないと思うのである。ハリー・ポッターしかりである。ハリー・ポッター好きはよく、「映画はつまらないけど本は面白い」と言うけど、それは逃げ口上に過ぎない。本よりつまらない映画なんて、作らない方がいい。

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