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(500)日のサマー

評価 : ★★★★★

主人公のトム・ハンセン(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)は大学で建築を学んだものの建築家になることができず、グリーティングカードの会社でライターをやっている。ぱっとしない毎日を送っていたんだけど、ある日社長のアシスタントとして会社に入ってきたサマー・フィンに恋をしてしまう。

いやー、よかった。いや見終わった後すぐはスゲー憂鬱な気分になって、「これだから女ってやつはよー」なんて思っちゃったんだけど、ほろにが系のいい映画でした。最初劇場で予告編を見たときはベタな甘ったるい恋愛映画かと思ってたんだけど、ひと味違う。空中キャンプの人がべた褒めしてた(2010-01-09 - 空中キャンプ)ので半信半疑で見に行ったら見事に予想を裏切られた感じで良かったです。

男女の描き方

本作では主人公トムが真実の愛を信じるロマンチストで、サマーの方が真実の愛を信じない女として登場するわけだけど、このキャラクター描写が絶妙だと思った。現実世界ではだいたい女の子の方が永遠の愛を信じてて、男の方はわりあいさらっとしてるととらえられがち(男は性欲のみで女の子の方が気持ちを大事にするとか)、でも男から言わせてもらえば、女の子の方が現実的な側面が強いこともままあるわけでしで、例えば男は一回好きになった女の子のことをなかなか忘れないんだけど(自分の身の回りの男連中はみんな女の子にふられた後は廃人状態になってる)、女の子の方は気持ちが離れたらさっと去っていくみたいな。どうですか皆さん? そういう側面有りませんか? この映画ではトムがロマンチストとして登場し、サマーの方がわりあいあっさりとした感じで登場するからちょっと普通の男女関係とは違って見えるけど、ふられた後の男の悲惨さと、去っていく女の子の潔さというか残酷さ、冷酷さはとてもよく描かれてると思った。

音楽が80年代後半

ネットで見た人の感想を読んでいると、どうも僕より5, 6歳上の男性諸氏に特にぐっと来るみたい。予告編にも使われてる、エレベーターの中でトムがThe Smithsの "There Is A Light That Never Goes Out" を聞いてたら、ろくに話したこともないサマーが "I love The Smiths" と話しかけるシーンとかね。ジョゼフ・ゴードン=レヴィットは僕と同じ歳なんだけど、80年代のさわやかポップミュージックがたくさん使われてるから、監督のマーク・ウェブと同じ世代の人だとドンぴしゃ来るのかも知れない(僕はThe Smithsも名前くらいしか知らなかった)。映画の中でトムがPixiesの "Here Comes Your Man" を歌うシーンがあるんだけど、このシーンとかとても気に入りました(iTunesで曲買ってしまった)。好きな女の子の前でこんな直球な曲を歌うなんてなんか文化祭でバンドやりたがる中高生男子みたいな発想だよ。いやでも良いんだよ。毎日サントラでジョゼフ・ゴードン=レヴィットの歌声聞いてます。

ズーイー・デシャネルかわいい

この映画はジョゼフ・ゴードン=レヴィットも良い味出してるんだけど、なんと言ってもサマーを演じたズーイー・デシャネルがかわいいんだよね。かわいいのにドライで冷たい女の子。サマー一筋に入れあげてるトムを振り回す感じが絶妙です。

もう一回みたくなってしまった。熊本では4月公開なので福岡まで遠征しそうな勢いです。そんくらい良い映画だった。夢見がちな男性諸氏必見です。

追記

すでに映画を見た人向けのレビューだけど、以下の記事が深かった。

なるほど、と思った。映画を見終わって「サマーはなんてビッチなんだ!」と憂鬱な気分になったのは、サマーが本当にビッチだからじゃなくて、実はトムの方に問題があることを観客である僕も潜在的に気づいていたからかも知れない、と思った。

特に上記引用の二つ目の方の記事は劇中での音楽の使われ方から分析しているのだけど、これが特に深い。なるほどー、と思わせられる点がたくさんある。あまり詳しくはネタバレになるので書かないけど、トムはサマーに対して、自分勝手な都合の良い思い込みをしていたのだ。

確かに、インディーロックが好きなかわいい女の子なんてそうやすやすと見つかるもんじゃない。男はしばしば、自分の好きな音楽や映画や本を女の子に押しつけがちだけど、その辺気をつけなきゃいけないなーと思った。女の子がいったい何を自分に求めているのかをしっかり気づいてあげないといけない。好きじゃなくても、ドライブに行くときは宇多田ヒカルを聞いてあげたりしないといけないのだ。

映画冒頭のナレーションというか、注意書きみたいのでマーク・ウェブのコメントがあるんですよ。そこでやたら "Coincidence" が強調されるわけ。この映画はフィクションであり、登場人物が実際の人物に似ていたとしてもそれは "coincident" ですよって。「特にJeniffer Beckerman(名前は微妙に違ったかも)、あのBitchめ」みたいな字幕が入るところで笑ったんだけど、きっとマーク・ウェブの昔の彼女なんでしょう。そんな愚痴っぽいコメントを冒頭に挿入しながらも、僕らのようなダメ男に、「お前が女の子にふられるのはお前がダメだからなんだー!」と気づかせたかったんじゃないかな、って僕は感じました。

さらに追記

SpearmintのCD買った。「Spearmintを聞かない人生は苦痛だ!」

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脳内ニューヨーク

評価 : ★★☆☆☆

脚本家のケイデン(フィリップ・シーモア・ホフマン)が主人公。画家の妻と娘の三人で平凡な暮らしを送っているんだけど、体調は優れないし妻には愛されていないみたい。「仕事が進んでいないから」とケイデンが脚本した劇の初日の公演に来なかった妻が、明け方家に帰ってみるとソファで友達と話し込んでいたり。家族で行く予定だったベルリンの妻の個展にも「来ないで」と言われてしまうケイデン。つらいぞケイデン。『マルコヴィッチの穴』のスパイク・ジョーンズが一枚噛んでる映画。

うーん、よくわからなかった。妻と娘が去った後、ケイデンはすごいデブなのにもかかわらずもてる。劇場のチケット切りの女の子や女優とできちゃったりする。でも娘のことが忘れられない。そのことが原因で後妻ともうまくいかなくなったり。というか後妻の女優を演じていたのがミシェル・ウィリアムズだって気がつかなかったな。本当に美人に見えるときとブスに見えるときの落差が激しい。今作では美人に見えました。

妻子に去られ絶望に暮れていたケイデンのところに郵便がやってきて、脚本がなんかの賞を受賞して大金を手にすることが分かった。その金でケイデンは途方もないことをやり始める。ニューヨークの中にもう一個ニューヨークを作ってしまうのだ。古い工場だか倉庫だかの跡地に大がかりなセットを組み、ニューヨークを再現していく。その中にはケイデンや妻、愛人、前妻や前妻の家の掃除婦まで登場させる。しかし遅々として劇は進まない。

結局最後の方はぐだぐだなままに終わってしまう。あんまり内容覚えてないけど『マルコヴィッチの穴』っぽい感じだった。意味分かんない系の映画。予告編はすごくポップな感じで面白そうだったんだけど、ずーっと暗いまんまだった。残念。ただテーマ曲が良かった。Deanna Storeyが歌う "Little Person" という曲。すごく切なくて良い曲。映画の内容はともかく、この曲を知ることができて良かったです。

YouTube - Little Person (Synecdoche, New York)

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母なる証明

評価 : ★★★☆☆

韓国映画。サスペンス映画。主人公は障害のある息子トジュンを持つ母親。母親は息子のことを溺愛しているが、ある日息子は女子高生殺人事件の犯人として逮捕されてしまう。障害のある息子が女子高生を襲って殺害するなんて考えられないのだが、状況証拠がそろってしまっておりどうすることもできない。母親は必死に息子の無罪を証明しようとするのだが…。

韓国映画は久しぶりに見た。映画好きの人の間で韓国映画は評判良いけど、自分は何か疲れる。この映画もかなり疲れた。

まず韓国の景色が疲れる。なんかどんよりしてる。パステルカラーのど派手な色と、冬の韓国の枯れ草色の景色の対比がどんより感をいっそう強くして疲れる。しかも事件現場とかがスラムっぽい感じのところで、まるでメキシコ映画に出てきそうな景色だった。あまり好きになれない。

第二に韓国の映画には激情的な人がたくさん出てくる。これがスゲー疲れる。トジュンに接触して逃げた金持ちのベンツをトジュンの友人であるチンピラのジンテが追っかけるんだけど、いきなりベンツに乗ってた連中に襲いかかったりするし。あと生意気で悪そうながきんちょとか、ビッチな女子高生とか。見ているだけでしんどかった。

トジュンを演じたイ・ビョンホってのは四天王っていうのの一人なのかな。品川庄司の庄司っぽかったけど、演技はとてもうまいと思った。トジュンは発達障害なんだけど、ときどきすごく鋭い。小さい頃に母親が自分を殺そうとしたことなんかを覚えている。ぐさりと刺さるような言葉を、うつろな目で発する。確かにこの辺はすごいなと思った。

母親の愛情を描きたかったのか、韓国の障害者差別の風潮を取り上げたかったのか(警察は状況証拠がそろえば障害者を犯人に仕立て上げて事件を幕引きにしようとする)。多分どちらともが監督の意図したテーマだったんだろう。意外な結末にやりきれない気分になる。どんなラストかは見てのお楽しみ。

キネマ旬報の2009年の外国映画ランキングでは2位だった本作ですが、僕は疲れるのでもっと軽い映画が好きです。

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就職した

2009年はいろいろありました。まず就職した! ダサいことに上京して三日で会社辞めて帰ってきましたが。転出届を出すために役所に行ったときに会った同級生と10日後に地元のディスカウントストアで鉢合わせたときのかっちょわるさはなかなかのもんでした。まぁ僕っぽいつったら僕っぽいです。その後いろいろあっていま働いてるところにお世話になることになりました。

CakePHPをさわるようになった

いままでの趣味のプログラミングというかCMSいじりから一歩脱却して、いまはCakePHPでサイトを作っています。フレームワーク開発。開発と言ってもCakePHPはBakeやScaffoldingでものの数分でアプリケーションを作れてしまうので大して高度なことをやっているわけではないのですが、すでにあるもの(WordPressなど)をいじる段階から、フレームワークの助けは借りているものの一応自分でサイトを組み立てていくというステップに一歩前進したかなとは思います。

あとJavaScript。いまんところjQueryの面白そうなプラグインを見つけてきてそれをカスタマイズしてるだけな段階なので、せめて人の助けを借りずになんかできるようになりたいです。デザインは全然できないので誰かに頼るとして、サーバーサイドとクライアントサイド両方ある程度の技術を身につけたいかなと思っています。そんでなんか楽しいサイトを作ってみたい。

Twitterの人たちと会った

仕事以外では2009年はネットで知り合った人と良くお会いした年でした。2007年春にTwitterを初めて、2007年末から2008年前半にかけてはTwitterにのめり込んで、実際に他のユーザーに会うようになったのは地方住まいということもあって遅く、2008年の後半からでした。Twitterはもはや暇つぶしの道具ではなく生活の一部になった観があります。というかネット関係の仕事をしたいと思うようになったのはあきらかにTwitterの影響ですね。

映画をよく見るようになった

あと働き出したことで、平日はがっちり仕事に拘束されてしまうので、週末は必ず一本映画を見るようになりました。無職のときより映画への欲求が強くなったというか。これは良いことだと思います。2009年後半は毎月4〜5本ペースで見たはず。

iPhoneなどデジモノガジェットにどっぷりつかってるいまだからこそ、自宅でレンタルDVDで映画見るんじゃなくて、外に出て行って劇場でアナログ的に映画見るのが楽しいですね。知らない人と一緒に泣いたり笑ったりする場を求めているというか。映画館に足を運ぶ人が減ってるらしいけど、配給会社は工夫して劇場にもっと人が足を運ぶ仕組みを作って欲しいですね。なんたって劇場で見る映画は格別です。とりあえず映画料金を1200円くらいに値下げしてくれたら人いっぱい映画館に来ると思うんだけどな。

あまり本を読まなくなった

映画をよく見るようになった反面本を読まなくなりました。東京に住んでた頃は電車移動でしたので、電車の中で本を読むということができていたのですが、地方では車で移動するので移動時間に本を読むということがなかなかできません。実は電車の中での読書というのが非常に大切で、読書はなんかとっかかりがないとはかどらないものだと僕は思っているのですが、電車の中での読者がこのとっかかりとして最適で、電車に乗る度に本を開くので読んでいる本の続きを常に意識するようになり、帰宅してからも本をよく開いてました。しかし電車移動中の読書ができなくなると読書のひっかかりがなくなってしまって、僕のような中途半端な人間はなかなか本を開かなくなってしまうのです。加えていまはiPhoneがあるので、ついつい暇な時間はネットにアクセスしてしまう。無職のときはそれでも読書の時間があったんだけど、さすがに朝から夜遅くまで働いてると本を読む時間はとれなくなってますね。いかんなーとは思いつつ、本との距離が遠のいてます。

2009年に見た映画で良かったもの

2009年に見た映画で良かったものを三つあげてみたいと思います。一本目はなんと言ってもクリント・イーストウッドの俳優引退作『グラン・トリノ』。これは素晴らしかったです。アメリカ人になりたいって思わせる、かっちょいい映画でした。次はクエンティン・タランティーノの『イングロリアス・バスターズ』。これも完成度高かったです。映画マニアも一般の人も楽しめるというすごい映画。次が是枝裕和監督の『空気人形』。人間のエゴについて考えさせられる映画でした。次点で『あの日、欲望の大地で』と『そして、私たちは愛に帰る』かな。映画の感想を別のブログに書いているので良かったらときどき覗いてあげてください。

iPhone

2008年はiPhone一色の年でしたが、2009年もiPhoneの年でした。ブログには書いてなかったですがiPhone 3GS買っちゃってるしアップルにお伏せしまくりです。

昨夜、友達に電話して年明けに遊ぶ日程を決めていたのですが、そのときナチュラルにMac見ながらiCalでスケジュールを確認して予定を入れてました。いまじゃこんなこと普通なんだけど、数年前までは手帳に書き書きしていたことを、コンピューター上で入力して携帯電話で確認する、みたいな。スゲー世の中になってきてると思います。一昔前にこんなことやろうとしたらペンタブレット付きのPDAとかパソコンと接続するためのクレードルとか大仰なアイテムが必要だったのにねー。いまはメールとカレンダーはGoogle<->iPhone<->Macでクラウドしちゃっててマジサイコーな感じです。

2010年も適当にがんばります

とりとめもなくぐだぐだ書いてしまいましたが、2010年はもちっと飛躍出来るようにがんばりたいですね。同級生はみんな所帯持って立派になってきてるので、追いつくとまでは言わないまでももう少し年齢相応の働きをしたいです。

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カールじいさんの空飛ぶ家

評価 : ★★★☆☆

冒険好きの少年だったカールじいさんがおてんばっぽい感じの女の子エリーと仲良くなり、大人になった二人は結婚する。エリーと二人でいつの日か南米にあるとされる伝説の滝を訪れることを目的としていたが、怪我や事故で出費がかさみなかなか夢は叶わない。それでも二人は幸せな生活を送っていたが、夢叶うことなく病に倒れたエリーはカールを置いて先立ってしまう。二人の思い出が詰まった家は再開発で地上げ屋にマークされカールにとっては憂鬱な毎日。ある日建設会社の連中とトラブルを起こしたことで老人ホーム行きが決定的となったカールじいさんは、家に大量の風船を結びつけて家ごと飛び立ち、妻が生前訪れたがっていた伝説の滝“パラダイス・フォール”を目指す。

細かな映像描写に圧倒された

3D吹き替え版を鑑賞。ピクサー映画は初めて見た。正直いままで子ども向けだと思って敬遠してたんだけど、劇場で見てみてびっくり、すごかった。映像のディテールに圧倒された感じ。こんなにCG技術が進歩しているとは思わなかった。滝の映像は下手をすると実写を超えそうなくらいに迫力があった。

あとびっくりしたのがカールじいさんなどキャラクターの表情。昔見たディズニー映画(『美女と野獣』とか)は、表情がいかにもアメコミって感じで全然感情移入できなかったんだけど、カールじいさんやラッセル(ボーイスカウトの少年。年寄りの手伝いをすることでボーイスカウトのバッジをコンプリートできるためじいさんの冒険について行く)の表情がとても自然なこと。冒頭の15分くらいはカールとエリーの結婚生活を駆け足でたどるんだけど、エリーが流産して病院で悲嘆に暮れるシーンとかは、本当に悲しさが伝わってくる。いきなりほろり来てしまった。

映画の公式サイトでは宮崎駿はじめジブリ一味が宣伝を担当してるけど、確かにジブリっぽいなと感じた。家が空を飛んだり飛行船が出てきたり動物がしゃべったりとかはラピュタチックな感じ。ただストーリーそのものはジブリ系の方が魅せるなー。よくある冒険活劇の枠を出てないように感じた。

まとめると、ストーリーはともかくとして、完璧主義者スティーブ・ジョブズが作ったピクサーの映画なだけあって映像のクオリティーはとんでもなく高いなーと思った。WALL・Eとかも未見だったけど、機会があったら見なきゃいけないなー、と思った次第です。劇場公開を見逃したことが悔やまれる。

| @音楽

年末にギターパンダという人(バンド?)が阿蘇にやってきたのでたまたまライブを拝見。超かっこよくてファンになってしまいました。バルーンフェスティバルというイベントのステージだったのですが、一日目はひとりギターパンダで、一人でエレクトリックギターによる引き語り。

ギターパンダ

二日目はバンド編成で、熊本県民ならみんな知っている(けどいろいろあっていまはテレビで姿を見ることができない)うんばば中尾氏がドラムをたたいてました。

ギターパンダ

YouTubeに『うたをうたおう』という名曲のライブ演奏がアップされてるので、Twitterユーザーの方は「大好きなwyinoueさんが歌っている!」と思い込んでごらんになってください。

こちらこそイェーイ!

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空気人形

評価 : ★★★★★

主人公の空気人形(ペ・ドゥナ)は、板尾創路が演じるしがない中年男秀雄に飼われている。ぼろアパートで人間の女の代替品として秀雄に抱かれるだけの日々。しかしある日心を持ってしまい、外の世界の美しさを知る。街を散歩していてたまたま入ったレンタルビデオ店の店員純一(ARATA)に恋をしてしまうが、そのせいで傷ついたり悩んだりするようになる。

いわゆるダッチワイフが感情を持ってしまうという話。こういうオシャレで荒唐無稽な映画はミシェル・ゴンドリーの『恋愛睡眠のすすめ』を見て以来敬遠してたのだけど、予想に反してすごく気に入ってしまった。久々に「もう一度見たい!」と思える映画だった。台湾のカメラマンを起用した東京の映像も美しい。錆びたぼろアパートの金属の描き方とか。

パリ、ジュテームっぽいオムニバス映画っぽさも

ところどころで摂食障害の女や年増の受付嬢、孤独な老人、変態浪人生(フィギュアのスカートの中をビデオカメラ越しに覗きながらマスターベーションする)、父子家庭の親子、認知症の気がある未亡人、おかしな警察官(寺島進が演じてる。警官のくせにレンタルビデオ店で「ものすごい悪い警察官が出てくる映画」を見たがる。笑った)などとペ・ドゥナがすれ違う。この辺はまるで『パリ、ジュテーム』を見てるみたいだった。東京に住む人々の孤独を人形越しに表現している感じ。しかし映画にストーリーらしいストーリーがあるわけではない。人形であるペ・ドゥナがふわふわと東京の街を散策するだけ。

ファンタジックだけど面白い

僕は映画を見るときにはかなりリアリティーにこだわるので、例えばドイツを舞台にした映画なのに登場人物が全員英語をしゃべる映画とかは興ざめで全く見る気にならない。ワルキューレとか縞模様のパジャマの少年とか。どんだけテーマが面白そうだったり感動的なストーリーでも、全然受け付けない。だからこの手のリアリティーを完全無視したファンタジックな映画は苦手だし、面白くつくるのはとても難しいと思うんだけど、僕のようなリアリティー重視派の人間でも納得させられる出来だと思った。ペ・ドゥナと人形の容姿はまったく似てないのに、空気人形と心を持った人間の女を行ったり来たりするシーンに違和感がない。ペ・ドゥナのお腹に空気を入れるための弁があるところとか、顔はペ・ドゥナのままなのに体だけ空気がしぼんでいく様とか、映画自体に圧倒的な雰囲気がなければ興ざめも興ざめ、非常に寒々しい映像になるに違いないのに、全然違和感がなかった。

唯一注文をつけるとしたら最後のCG。あれはさすがにないと思ったけど、それでも僕はこの映画は高く評価する。都会で孤独な生活を送る人間のエゴがよく表現されてる。人間のエゴで人形は傷つくのだけど、人形の無邪気さが今度は最愛の人を傷つけるのだった。いい映画でした。

追記

ポスターのペ・ドゥナは全然かわいく見えないし、好きなタイプの容姿でもないんだけど、映画のなかの動いてるペ・ドゥナはとてもかわいかったです。

あとARATAって僕が高校生の頃はSmartとかメンノンに激烈オシャレモデルとして登場してた気がするんだけど、風采の上がらないビデオ屋の店員を好演してました。というか映画見終わって家で映画の公式サイト開くまでARATAが出てたって気づかなかった。