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hubot のことを "ひゅ〜ぼっと" と読むの、いけ好かない感じがする。たとえ GitHub の中の人が "ひゅ〜ぼっと" と読んでいたとしてもいけ好かない。 "ふぼっと" も芋っぽい感じがして好きになれない。 GitHub はジットハブという読み方が正しいのだから hubot は "はぼっと" なのでは?

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 僕は自分のアパートに帰るとワインの瓶とグラスを出して中谷彰宏の『面接の達人』を読んだ。またまた中谷彰宏だ。面接の達人は飽きもせず僕に説教をしている。

 僕はワインを三杯飲むあいだ中谷彰宏につきあっていたが、途中でだんだん眠くなってきたのであきらめて本を閉じ、バスルームに行って歯を磨いた。これで一日が終わった、と僕は思った。有意義な一日だっただろうか? それほどでもない。まあまあというところだ。

 朝、先物企業の筆記試験を受け、昼は外食企業の一次にして最終の面接を受けてその場で内定を言い渡された。夕方からは住宅販売の会社説明会に参加したが、説明をしていた社員の顔に覇気はなかった。まあまあだ。

 夏休みまで引きずった就職活動の一日はブラック企業の応酬だった。しかしとにかくこれで一日が終わったと僕は思った。

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 日曜のお昼前に、切干大根を煮ているときに、UFJ銀行のリクルーターから電話がかかってきた。受話器を取ると、疲れ切ったリクルーターの声が聞こえてきた。

「こんにちは。こちらUFJ銀行です。当行といたしましては是非一度お会いしてお話ししたいので、今度の土曜日に研修所まで来てください」とUFJ銀行のリクルーターは僕の予定も聞かずに言った。

 僕はびっくりしてしばらく口がきけなかった。「お話しするって、具体的にどういうことをなさるのですか?」と僕はやっと尋ねてみた。

「やれやれ、あなたはメンタツを読んだことがないのですか?」とリクルーターは呆れたように早口で言った。僕に聞こえるように電話口の向こうでペンをこつこつと鳴らしさえした。

「メンタツのなかに都市銀行の採用はリクルーター方式だと書いてあるのを、ひょっとしてあなたはご存じないのですか?」

 残念ながらメンタツは一度も読んだことがない。僕は理工系の大学の三年生で就職するつもりはなく、大学院に進学しようと思っている。まわりにもメンタツを読んだことのある人間なんて一人もいないと思う。僕が正直にそう言うと、UFJ銀行のリクルーターは腹立たしげに「ふん」と小さく鼻を鳴らした。メンタツを読んだことがない人間とこれ以上話をしても仕方ないというように。でも電話を切ろうとはしない。

「あの、ところでいったいどうして僕の電話番号をご存じなのでしょうか?」と僕はおそるおそる質問してみた。ひょっとしたら個人情報が流出しているのかもしれない。そうじゃないといいなと僕は思った。僕は勧誘電話の類が大嫌いだからだ。

「そういうものは就職課から送られてくるのです」とUFJ銀行のリクルーターは妙にきっぱりとした口調で言った。「オープン採用を装いつつも、都市銀行は名門校の学生に対してのみリクルーター採用を行っているのです。優秀な学生を確保しておかないと私自身が出世できないので、こちらも必死なのです」

 僕は心からUFJ銀行のリクルーターに同情した。「大変ですね。でもだからといってあまりがっかりしないでください。僕以外の学生は就職を考えているかもしれないのですから」

 そうですね、とリクルーターは答えた。「ところであなたは、ミツビシとミズホのリクルーターが動いているかどうかご存じですか?」と少しでも有益な情報を得ようと僕に尋ねた。

 知らないと僕は言った。だってそんなこと知っているはずがない。僕はシステムデザイン工学の研究で毎日朝から晩まで忙しいのだ。

「嘘だ、あなたは本当は就職活動をしていてミツビシに内定しているんだ!」とUFJ銀行のリクルーターは叫んだ。そしてがちゃんと電話を切った。何がなんだかわけがわからなかったけれど、それ以上ものごとは進展しそうになかったので、僕はお昼に温かいご飯と切干大根を食べた。

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 僕がJR東海に勤める渡辺昇という男にOB訪問を依頼したのは2月の中ごろのことだった。資料請求したら、送られてきた封筒のなかに同じ大学の卒業生の連絡先が同封されていたからだ。これってOB訪問をしろということに違いない。

 春の冷たい雨が降るある日の夕方、僕は待ち合わせ場所の東京駅八重洲北口にいた。約束の時間の五分前に渡辺昇はやってきた。一度懇談会に参加したので僕は彼の顔を知っていた。聡明ではあるが特徴のない顔をした男だ。

「やぁ」と渡辺昇は言った。

「こんにちは」と僕は挨拶した。

 渡辺昇は僕を東京駅構内にある居酒屋に連れて行った。OB訪問で酒を振舞われたのは初めてのことだったので、僕はひどく混乱した。おかげでいくらビールを飲んでもちっとも酔いが回らなかったし、とても奇妙な気分になった。それでも僕はちゃんと用意してきた質問をした。僕は機転がきくたちなのだ。

「お仕事は面白いですか」と僕は訊いた。

「仕事? 悪くないね」と彼は答えた。

「どういう仕事をされてるんですか?」

「新幹線を使う旅行商品を作ってるんだ。この前なんか東京駅から京都まで日帰りする商品を作った」

「うーむ」

「君は何がなにがやりたいの?」と渡辺昇は僕が何か感想を述べようとしたのをさえぎって訊いた。やれやれ、せっかちな男だ。

「僕は国鉄を舞台にした映画を撮りたいんです」

「ほう」

「ストーリーはこうです」と僕は言った。「ある晴れた日曜日の朝に僕が原宿の竹下通りを歩いていると、向こうから僕にとって100%の女の子がやってくるんです。我々はマリオンクレープの前で運命的な出会いを果たす。注意すべきは、100%と言ってもあくまで僕にとって100%ということです。だから別に美人じゃなくてもいい」

「ひとつ質問してもいいかな?」と渡辺昇は言った。

「どうぞどうそ」

「その映画は原宿駅が舞台なのかい?」

「そういうことになりますね」と僕は答えた。

「ふーむ」とため息をついてから渡辺昇はビールを飲み干した。「君は勘違いをしているな」

 僕は渡辺昇が言っていることが理解できなかった。僕が一体何を勘違いしてるっていうんだ? ここに来る前にちゃんとメンタツを読んだし、自己分析だってやってきた。採用ホームページに目を通すことも怠らなかった。僕が非難されるいわれはひとつとしてないはずだった。

「君はOB訪問する相手を間違ったんだよ。蜂にミツバチやスズメバチがあるように、JRにも種類があるんだ。JR東海とか、JR東日本とかね。原宿駅はJR東日本の管轄であってうちの管轄ではない」

 それだけ言ってしまうと渡辺昇は伝票を持って席を立った。やれやれ、この男は僕がJR東海とJR東日本を混同したことに対して腹をたてているのだ。

 僕は会計を済ませる彼の姿を眺めながら竹下通りですれ違うはずだった彼女のことを考えた。

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 中央三井信託銀行というところから——どうしてさっさと住友信託銀行と合併しないのだろう?——就職活動の状況について語りあいたいのだけれど個別説明会に来てもらえまいか、という電話がかかってきた。いいですよ、と僕は答えた。僕も就職活動についてはいろいろ悩んでいたし、ちょうどこちらからどこかの銀行の行員にOB訪問でもしようと思っていたところだった。

 中央三井信託銀行・個別説明会は郊外の研修所で行われていた。説明会とは名ばかりで、ブースに座らされて出身大学OBと一対一の面接を受けさせられた。

「結局、君の自己PRって良くも悪くもドーナツ的なんだよね。中身がない」

 そうだな、僕の自己PRはたぶんドーナツ的で中身がないのだろう。でも今はもう五月の頭で、もうすぐゴールデンウィークに入ろうとしているのだ。今頃自己分析が甘いと言われても困る。